カート・シリング
レッドソックス復帰に課された条件
連載
2007.12.24
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第118回
カート・シリング
レッドソックス復帰に課された条件
李 啓充 医師/作家(在ボストン)
2007年,今世紀2度目のワールドシリーズ優勝を達成したレッドソックスにとって,シーズンオフの補強の最大課題は,契約が満了したマイク・ロウエル三塁手,カート・シリング投手との再契約がなるかどうかだった。ファンにとって幸いなことに,レッドソックスは両選手との再契約に成功したが,シリングとの再契約に当たってレッドソックスが課した特別条件が話題となったので紹介しよう。
と,ここまで読まれた読者は,私が某週刊誌の大リーグ連載と混同して原稿を書いているのではないかと疑われたのではないだろうか? しかし,(1)某週刊誌の連載は終了となったので混同するはずもないし,(2)レッドソックスがシリングに課した条件とは,米国公衆衛生上の大問題に関連するものであるので,辛抱して読み続けていただきたい。
球威より腹囲?
さて,2007年のシリングは,9勝8敗と不本意な成績に終わったが,レッドソックスは,40歳という年齢相応の衰えに加えて,「コンディショニングの怠慢」が不振の原因と考えた。というのも,シリングは,春季キャンプに,首脳陣が「開幕に間に合うのか」と不安におののくほどの,「でっぷりとしたお腹」で現れたことに始まって,シーズン中も,ずっと,球威よりも腹囲が打者を圧倒するような体たらくに終わったからである。
そこで,再契約に当たって,「体重管理に成功したら200万ドルのボーナス」とする特約条項を付加,シリングがコンディショニングに努めるような「インセンティブ」を与えたのだった。レッドソックスが課した体重制限は230ポンド(104.3kg)以下と言われているが,シリングの身長(6フィート5インチ,196cm)からすると,BMI27.3以下と,「中等度の過体重」の範囲内に保つことを求めたのだった(註1)。
米社会に蔓延し続ける肥満
実は,いま,米国における公衆衛生上最大の問題は,「肥満」であるといっても過言ではない。現在,過体重は米成人の3人に2人,肥満は3人に1人,極度の肥満は20人に1人と見積もられ(註2),肥満がらみの医療費が巨大な負担となって社会にのしかかっている。しかも,こ...
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