医学界新聞

連載

2007.09.10

 

連載
臨床医学航海術

第20回   医学生へのアドバイス(4)

田中和豊(済生会福岡総合病院臨床教育部部長)


前回よりつづく

 臨床医学は大きな海に例えることができる。その海を航海することは至難の業である。吹きすさぶ嵐,荒れ狂う波,轟く雷……その航路は決して穏やかではない。そしてさらに現在この大海原には大きな変革が起こっている。この連載では,現在この大海原に起こっている変革を解説し,それに対して医学生や研修医はどのような準備をすれば,より安全に臨床医学の大海を航海できるのかを示したい。


 前回は勉強方法10か条の第4条「基本から応用に向けて勉強する」について述べた。第5条「common diseaseから奇病に向けて勉強する」と第6条「専門から専門外に向けて勉強する」は,研修医になって臨床現場での勉強方法であるので,ここでは述べない。今回は第7条について解説する。

勉強方法10か条
第1条 勉強は自分でする。
第2条 原則と禁忌を覚える。
第3条 次の一手を覚える。
第4条 基本から応用に向けて勉強する。
第5条 common diseaseから奇病に向けて勉強する。
第6条 専門から専門外に向けて勉強する。
第7条 人から技術を盗む。
第8条 知識を知恵にする。
第9条 森を見て木も見る。
第10条 手段を目的化しない。

第7条 人から技術を盗む

 この第7条の「人から技術を盗む」というのを聞いて読者はどう思うであろうか? 当たり前と思うであろうか? それともなぜそんなことをしなければならないのかと思うだろうか?人からわざわざ技術を盗まなくても,書籍や講義で十分に学べるのではないかと。

 確かにその通りである。しかし,ここで学校の講義がなぜわざわざ「人」が教えるという形態をとっているのか考えてみよう。読者の皆さんは,学校に通っていたときあるいは現在学校に通っていて,どうして学校にわざわざ通う必要があるのだろうかと考えたことはないであろうか?

 学校に通わなくても,このような決められたカリキュラムは他の方法で勉強できるはずである。自分で本を読んだり,講義ビデオを見たり,その他の教育ソフトを用いて勉強しさえすれば,何も絶対に学校などに通わなくてもよいはずである。学校に通うのは大変である。バスや電車で通えばお金がかかる。朝寝坊はできない。自分の好きな時間に登校できない。雨や風が強い日にも通わなくてはならない。また,自分が風邪などひいて体調が悪くても試験などがあったら無理をして学校に...

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