金原一郎記念医学医療振興財団
第78回認定証(第40回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
取材記事
2025.11.11 医学界新聞:第3579号より
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=上武大学長・澁谷正史氏)は,このほど「第40回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者を選出(助成金額3035万円,57人)。10月15日,医学書院(東京都文京区)にて第78回認定証贈呈式が開催された。
開催に際し,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役会長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継ぎ,基礎医学研究への資金援助と人材育成への助力を目的として1986年に設立された同財団の背景を紹介。選出された交付対象者をたたえ,「助成金を研究活動に有効活用し,今後の日本の医学研究を担う存在として一層活躍してほしい」と激励の言葉を述べた。次に,本助成金の選考委員長も務める澁谷氏は,「今後も着実に研究を発展させ,国際的な交流も深めながら,日本のみならず世界の若手研究者を牽引してほしい」と述べ,祝辞とした。
交付対象者を代表し,田中真司氏(東大・助成対象「エンドトキシン応答に基づいた腎障害治療戦略の開発」)が壇上に上がった。エンドトキシンは,大量投与では敗血症性ショックのような状態を引き起こす一方,少量を事前に投与するとその後に生じる障害が軽減されることが知られている。氏はエンドトキシンによる腎保護作用のメカニズムを明らかにし,腎臓病の新たな治療戦略の開発をめざす。急性腎障害にはいまだ特異的な治療薬が存在しておらず,この研究計画も含め,世界初の治療薬開発への応用が期待される。あいさつの最後に氏は「医学の発展は基礎医学なくしては成り立たないという財団の理念を胸に,助成金を研究活動に生かし,今後も地道に精進していきたい」と語った。
第40回基礎医学医療研究助成金交付対象者
| No. | 氏名 | 所属機関(略称) | 研究テーマ(和文) | |||
| 1 | 足立 雄一郎 | Brigham and Women’s Hospital/Harvard Medical School Anderson/Ivanov | ストレス顆粒を標的とした新たな老化細胞除去戦略 | |||
| 2 | 阿栄 高娃 | 三重大院/医/分子病態学講座 | 腸上皮オルガノイドを用いたPPAR-γアゴニストによる腸線維化のエピジェネティック制御の解明 | |||
| 3 | 池田 英樹 | 千葉大院/医/呼吸器内科学 | ミトコンドリア動態に基づく酸化ストレス環境下がん免疫逃避の詳細解明 | |||
| 4 | 伊澤 俊太郎 | マックスプランク代謝研究所 NeuronalControl | ナルコレプシー治療標的としてのオレキシン受容体タイプ2の抑制性機能解明 | |||
| 5 | 磯﨑 春菜 | 関医大/脳神経外科学講座 | 二分脊椎症の予防に向けた責任遺伝子の発現機構の解明 | |||
| 6 | 稲垣 知希 | 藤医大/感染症研究センター | 染色体組み込み型HHV-6ゲノムの再活性化および神経病原性機構の解明 | |||
| 7 | 上野 圭吾 | 国立感染症研/真菌部 | 免疫回避能に優れた病原体をII型多核巨細胞が制圧する仕組みについて | |||
| 8 | 小川 昂輝 | 名市大院/薬/薬物送達学分野 | 磁気ナビゲーション技術を活用した経鼻AAV送達による中枢神経系ターゲティング | |||
| 9 | 奧宮 太郎 | 京大/ iPS細胞研/増殖分化機構研究部門井上研究室 | 新しい脳深部刺激療法を目指した超音波による神経操作法開発 | |||
| 10 | 小野 喜章 | 岡山大院/医/口腔顎顔面外科学分野 | 腫瘍免疫微小環境ネットワーク内のがん関連線維芽細胞と細胞外小胞を標的とした新規治療戦略の開発 | |||
| 11 | 小野寺 俊晴 | 阪大院/医/肥満脂肪病態学寄附講座 | 脂肪組織・アディポネクチンに着目した生理的・病的線維形成機構と制御に関する革新的研究 | |||
| 12 | 笠島 裕明 | 大公大院/医/消化器外科 | 中皮細胞を由来とする腫瘍免疫関連線維芽細胞を標的としたがん免疫制御解除の試み | |||
| 13 | 柏木 光昭 | 筑大/国際統合睡眠医科学研究機構 林研究室 | レム睡眠の神経回路メカニズムとその制御因子の解明 | |||
| 14 | 糟谷 豪 | 自治医大/医/生理学講座統合生理学部門 | 電位依存性K+チャネルKCNQ1に対する修飾サブユニットKCNE4の抑制作用とその分子機構の解明 | |||
| 15 | 川筋 仁史 | 富山大/医/感染症学講座 | 強毒型MRSAの表皮及び真皮感染における好中球機能の比較解析と病原因子の特定 | |||
| 16 | 北野 貴也 | 阪大院/医/神経内科学教室 | がん関連脳梗塞における血栓形成ネットワークの解明:CyTOFおよび単一細胞解析を用いた免疫・凝固・血小板相互作用の包括的解析 | |||
| 17 | 金 恭平 | 岡山大院/医歯/脳神経外科 | パーキンソン病難治性疼痛の新たなメカニズム解明 | |||
| 18 | 栗本 遼太 | 千葉大/医/病院/腫瘍内科 | がん翻訳異常の鍵を握るmRNA修飾:不均一性の可視化と次世代標的治療への展開 | |||
| 19 | 河村 真吾 | 岐大/医/整形外科 | 腱幹細胞制御機構を標的とした腱再生医療法の開発 | |||
| 20 | 後藤 裕樹 | 熊本大院/医薬/RI・腫瘍病態学 | IL-1RAPを起点とした造血器腫瘍幹細胞のクローン動態解析と標的放射免疫療法の開発 | |||
| 21 | 佐久間 一基 | 千葉大院/医/分子病態解析学 | コリン欠乏高脂肪食による急性肝脂肪蓄積機構の解明 | |||
| 22 | 佐藤 洋輔 | 昭和大学/医/脳機能解析・デジタル/医/研 | ガンマ波規則性解析とAIによる精密てんかん評価の研究 | |||
| 23 | 佐藤 洋平 | 福井大/医/耳鼻咽喉科・頭頸部外科学免疫 | オルガネラによる制御性T細胞における免疫記憶機構の解明 | |||
| 24 | 嶋岡 可純 | 精神・神経医療研究セ/神経研究所 病態生化学研究部 | 双方向アプローチから難治性てんかんの病態解明に向けて | |||
| 25 | 清水 真祐子 | 徳大院/医歯/疾患病理学分野 | 脳肝軸から解き明かす神経炎症誘導機構 | |||
| 26 | 末永 雄介 | 千葉がんセ/進化腫瘍学研究室 | ヒトde novo遺伝子NCYMの脳機能の解明 | |||
| 27 | 菅原 弘太郎 | 東大/病院/胃食道外科 | 食道扁平上皮癌におけるミトコンドリア密度・変異と免疫環境・治療応答の関連解析 | |||
| 28 | 髙橋 岳浩 | 東北大院/病院/皮膚科 | ヒアルロン酸がアトピー性皮膚炎の病態およびそのTh2免疫応答を制御する機序の解明 | |||
| 29 | 竹内 康人 | 金沢大/がん進展制御研/分子腫瘍分野 | 骨髄に形成される転移前ハブの新規概念に基づく乳がん転移機構の解明 | |||
| 30 | 武田 行正 | 近畿大/理工/生物環境化学科 細胞機能生化学 | 熱産性に非依存的なヒト褐色脂肪細胞を標的とした新規な生活習慣病予防法の開発 | |||
| 31 | 田中 真司 | 東大/病院/腎臓・内分泌内科 | エンドトキシン応答に基づいた腎障害治療戦略の開発 | |||
| 32 | 田中 佑典 | 旭川医大/解剖学講座 | Klk8によるミクログリアの貪食能および炎症応答の制御機構の解明 | |||
| 33 | 辻岡 洋 | 阪大院/医/分子神経科学 | ゼブラフィッシュとメダカ稚魚を用いた脊髄再生因子のスクリーニングと哺乳類での保存性の検証 | |||
| 34 | 寺田 百合子 | 金沢大/病院/呼吸器外科 | α7型ニコチン性アセチルコリン受容体を標的とした虚血再灌流障害の新規治療法の開発 | |||
| 35 | 長﨑 譲慈 | 大公大院/医/血液腫瘍制御学 | 悪性リンパ腫のCAR-T細胞治療後の新規再発メカニズムの解明 | |||
| 36 | 中嶋 正太郎 | 福島医大/消化管外科学講座 | 高次元空間イメージングに基づくHER2シグナルと免疫チェックポイントリガンド発現の網羅的解析 | |||
| 37 | 中森 正博 | 広島大/病院/脳神経内科 | Ca チャネルとシナプス可塑性をターゲットとした脊髄小脳変性症の新規治療探索 | |||
| 38 | 橋本 拓磨 | 東北大院/医/放射線生物学分野 | 乳酸脱水素酵素を標的とした神経膠芽腫の放射線増感戦略 | |||
| 39 | 橋本 洋佑 | 広島大院/医歯/分子システム薬剤学 | 変異claudin-5による異常な血液脳関門で誘導される中枢神経系疾患の発症機構の解明 | |||
| 40 | 原 朱美 | 慶應大 /医/感染症学教室 | 肺非結核性抗酸菌症における細胞内リサイクリング制御メカニズムの解明 | |||
| 41 | 平野 港 | 長大/高度感染症研究セ/ウイルス生態研究分野 | 核-細胞質間輸送の破綻によるクリミア・コンゴ出血熱ウイルス病態形機構の解明 | |||
| 42 | 廣瀬 亮平 | 京府医大院/医/感染病態学 | オルガノイドを用いたノロウイルスの培養・定量法の構築 | |||
| 43 | 福永 航也 | 理研/生命医科学研究セ/ファーマコゲノミクス研究チーム | 薬疹発症の予測精度向上を目指したHLAアレルのロングリード解析と病態機構の解明 | |||
| 44 | 福村 和宏 | 藤医大/腫瘍医学研究センター | がん特異的ポイズンエクソンの分子制御機構と腫瘍進展における機能解明 | |||
| 45 | 前田 日向子 | 徳大/先端酵素学研/発生生物学分野 | 胚が子宮環境に応答し、着床時期を調整するメカニズムの解明 | |||
| 46 | 牧瀬 尚大 | 千葉がんセ/臨床病理部 | ナノポアシーケンサーを用いた希少がんに対する統合病理診断 | |||
| 47 | 松井 千絵子 | 神戸大院/医/感染制御学分野 | C型肝炎ウイルスにおける肝発癌機構の解明 | |||
| 48 | 松本 知訓 | 阪大院/生命機能研 | 倍数性変化を切り口とした膵癌進展の新規機構解明 | |||
| 49 | 村山 正承 | 関医大/生命医学研/モデル動物部 | 腎組織線維化にて正と負に作用するCTRPファミリー分子/受容体の解析 | |||
| 50 | 八木 宏樹 | 東大/病院/循環器内科 | 血管周囲脂肪組織の炎症を基盤とした遺伝性結合織疾患における大動脈瘤の病態解明と創薬 | |||
| 51 | 柳田 圭介 | 東慈医大/分子生物学講座 | 脳内ドコサヘキサエン酸-コレステロール間の代謝リンクに迫る | |||
| 52 | 山内 隆好 | 旭川医大/感染症学講座 微生物学分野 | CX3CR1指標型T細胞療法による前がん期免疫回避の克服と作用機序の解明 | |||
| 53 | 山岸 良多 | 大公大院/医/病態生理学 | RNA結合タンパク質によるSASP因子制御機構の解明とがん治療標的としての可能性 | |||
| 54 | 山口 亜斗夢 | ハーバード大/公衆衛生大学院 | アポトーシス小体による腫瘍微小環境の変化:死にゆくがん 細胞に着目したがん悪性化機構の解明 | |||
| 55 | 山本 将大 | 九大/生体防御医学研/分子神経免疫学分野 | アストロサイトが有する特殊なグリセロリン脂質組成の生物学的意義の理解 | |||
| 56 | 吉村 仁宏 | 千葉大/医/病院/腎臓内科 | CRISPR activationによる糸球体ポドサイトの成熟化 | |||
| 57 | 渡辺 博文 | 新大/病院/腎・膠原病内科 | ナトリウム利尿ペプチドの腎硬化症進行抑制メカニズムの解明 |
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