外来指導の道を拓く5ステッププリセプター
『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版』 大活用術
岸田直樹
2024.08.13 医学界新聞(通常号):第3564号より
『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』(以下,『ジェネマニュ』)が大改訂されました。外来研修が必修化され,今後ますます外来での患者マネジメントが重要となる未来が見えていますが,どう指導したらよいの?と思っている指導医は多いと思います。また,かかりつけ医になるには,ジェネラルにかかわれる最低限のスキルを持った医師になることが求められ,研修医として行う外来研修はそのための土台となるはずです。そこで,私が総合診療外来,walk-in 救急外来で行っている『ジェネマニュ』を指導のサポートに利用した「外来指導5ステッププリセプター」をご紹介します。働き方改革により,より短時間での効果的な指導が求められているいま,指導医となる皆さんは『ジェネマニュ』をぜひ外来指導に活用してみてください。
定価:6,600円( 本体6,000円+税)
[ISBN978-4-260-04266-6]
{CCM:BASE_URL}/book/detail/107540
▲書籍の詳細はこちらから
外来指導5ステッププリセプターは以下からなります。

STEP➊
診察前疾患想起訓練(制限時間30秒)
● 患者を診る前に,まずは問診票だけで疑わしい疾患をパッと想起する練習をさせます。その名も「診察前疾患想起訓練」。
● その際,次のように3つ鑑別疾患を挙げるよう指示します。制限時間は30秒です。
① Primary:可能性が最も高い疾患
② Secondary:可能性が2番目に高いと思う疾患
③ Tertiary:頻度は低くても見逃してはいけない重篤な疾患
● 制限時間を設けることが重要です。問診票の情報は十分ではないため,かえって悩んでしまうことも多いですが,外来ではタイムマネジメントが求められます。「最初から正解を出すことが目的ではなく,タイムマネジメントを意識してパッと想起する訓練(練習)と思ってやってごらん」と伝えましょう。
● たった3つの鑑別疾患ですが,研修医にとっては挙げることが難しいです。この程度の重み付けがあるものでも悩むということを体感させるのが重要です。
● なぜ事前想起させるかというと,限られた外来時間の中で,疾患を予測して診察するのとしないのとでは,「病歴・身体所見をどう上手にとれるか?」の効率性が違うからです。また,疑いの目を持った診察は,疾患をとらえる感度に大きく影響します。「心内膜炎かも?」と思って聞く心雑音と,ルーチン診察での心雑音では,聞こえ方は大きく異なるでしょう。
● この時点で,挙げた鑑別疾患を指導医が修正してあげても良いです。また,研修医が複数いる場合には,下の年次の研修医にまずは挙げさせて,上の年次の研修医に修正してもらうとより効果的です。
STEP❷
rule in/out 病歴・身体所見チェック
● 研修医が鑑別疾患を3つ挙げたら,次のように質問を投げかけます。
「その疾患をrule in もしくはrule out するためにどんな病歴や身体所見を取りたいかな?」
● ここで指導医から小ネタ(風邪も胃腸炎も3症状チェック!*1など)を教えてあげてもいいですし,疑わしい疾患の病歴・身体所見・検査・治療をシンプルに確認できるように『ジェネマニュ』の中に設けた戦略リストを一緒に確認するのも良いでしょう。
● ここまでの研修医との確認を5分以内に行った上で実際に診察してもらう,という練習を外来研修ではひたすら繰り返します。
● 疾患の想起はできても「何を聞いたら良いか?」がわからないときや,3つの鑑別すら挙がらないとき,あるいは指導医としてもはっきりとはわからないときなどにも「『ジェネマニュ』の戦略リストを見てみようか」と...
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岸田 直樹 総合診療医・感染症医/感染症コンサルタント/一般社団法人Sapporo Medical Academy代表理事
東工大中退,旭川医大卒。静岡がんセンター感染症科フェローを修了し,手稲渓仁会病院総合内科・感染症科を経て2014年Sapporo Medical Academyを設立。その後,北大MPH,PhDコースで感染症疫学を学び(西浦研),20年から札幌市危機管理局参与としてコロナ対策に従事。北海道科学大・東京薬科大客員教授も務め,新時代で活躍する薬剤師の育成にかかわる。
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