心の不調に対する「アニメ療法」の可能性
[第11回] 「アニメ療法」の今後の展望・期待
連載 パントー・フランチェスコ
2024.05.14 医学界新聞(通常号):第3561号より
架空のキャラクターが相手でも,彼らの感情表現や行動から鑑賞者が影響を受ける可能性があることは,前回までに確認したアニメ療法の基礎的な部分で十分に見えてきました。架空の存在に対して感情移入をして自己変容が促されれば,他者への共感や自身の悩みへの意識が高まることでしょう。
ポストコロナの社会では「リモート」「デジタル」「AI」等について考える意義が一変したと言っても過言ではありません。上記のテクノロジーの可能性が展開される中では,人との隔たり,孤独は特に日本のような先進国において重大な社会課題となります。サービスの無人化・自動化が日に日に増加して効率性ばかりが求められる中,悩みを抱えたり,気持ちが浮き沈みしたりしても,そうした思いを他人に打ち明けられないこともあるでしょう。働き盛りの若者は,己の心に秘めた負の感情のはけ口を失いつつあります。
そうしたニーズを満たすには,アニメ療法の実装が役に立つでしょう。しかし,理論的に成立したとしても,実装に向けての課題は多々残っています。まず,アニメ療法を展開する舞台を具体的に考えなければなりません。一つの展望として,バーチャル空間におけるキャラクターとの個別化された交流が想定されます。この場合,理想的なプラットフォームの候補に,社会的なかかわりに似た活動を展開できるバーチャル空間であるメタバースが挙がります。バーチャルであるからこそ,現実における物理的な限界がなく,架空のキャラクターと話し合ったり,現実にない場面を生じさせたりできます。フィクションの良さを生かすアニメ療法にとって,もってこいのテクノロジーと言えるでしょう。
メタバースを形成するテクノロジーとして,AR(Augmented Reality:拡張現実),MR(Mixed Reality:複合現実),VR(Virtual Reality:仮想現実)...
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