MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
書評
2024.02.12 週刊医学界新聞(レジデント号):第3553号より
《評者》
野木 真将
米国クイーンズメディカルセンターホスピタリスト部門長・副メディカルディレクター
亀田総合病院総合内科部長
臨床の「型」を学習したい研修医に最適
本書は,聖路加国際病院内科チーフレジデントが編集・執筆した,内科レジデント向けのテキストブックです。第4版では,前版同様に研修医にアンケート調査を行い,これまでの改善点を徹底的に洗い直し,わかりやすい解説を心掛けるとともに,少しアドバンストな内容や参考文献を充実するなど,さらに読者目線で役立つ本をめざして改訂されました。
「鉄則」とは,臨床現場で頻繁に遭遇する典型的な症例の病態生理や診療方針など,医師が知っておくべき重要な知識のコアを指します。これは医学教育の分野で「クリニカルパール」と呼ばれるもので,具体的な症例から抽象化・概念化された知識です。クリニカルパールを熟知することで,似たような症例に迅速かつ的確に対応できる力が身につきます。また,コンパクトなフローチャートや語呂合わせを用いることで,限られた時間の中で効率良く重要な知識を整理し覚えることができるでしょう。クリニカルパールを明確化し視覚化するアプローチは,多忙な臨床現場での意思決定を支援する上で大変有用だと考えます。
しばらく当院の研修医との病棟チームラウンドで使用してみました。内科レジデントとして身につけるべき病棟管理の知識や技術を,症候別に体系的に解説しており,特にフローチャートが視覚的に目に入りやすいので,時間のないときに重宝しました。各症候の概要から,診断・治療の基本,鑑別診断,症例の振り返りまで,幅広い内容を網羅しています。電解質異常,心不全の病棟管理,肝硬変の合併症管理など多岐にわたるテーマにも有用でした。特に一番気に入ったのはアップデートされた知識と,本書にちりばめられた語呂合わせです。心不全の項目を読みましたが,最新ガイドラインの要点やFantastic FourをはじめとするGDMT(Guideline directed medical therapy)の解説もあり,初期研修医から専攻医まで満足させる内容の充実さでした。忙しい研修医は原著論文や総説を読む時間が取りにくいと思いますが,本書では効率良く知識の更新ができます。
本書の分厚さで内科全般をカバーできるのか? 疑問に思うかもしれませんが,内容としては「病棟管理」に集中しているので,ホスピタリストをめざす人や,フローチャートや語呂合わせを使用して臨床の「型」を学習したい研修医に最適です。
また,症例の振り返りでは,実際の症例を基に,臨床推論の過程や治療の選択肢などを検討しているので,自学自習でも指導医の思考過程を追体験できますね! 初期研修で一通り読み込み,しばらく時間を空けて今度はちょっと先輩医師になった際に見直してみる(spaced learning)と病棟での指導に奥行きが出そうです。
本書は,内科レジデント(専攻医)や,内科の初期研修医を対象とし,内科の基本的な知識や技術を身につけたい,臨床推論力を向上させたい,症例の振り返りを通して臨床力を高めたい,といった方にもお薦めです。
《評者》
黒川 彰夫
『日本臨床肛門病学会雑誌』前編集委員長
黒川梅田診療所院長
魅力あふれる新世代のバイブル的書籍
本邦においては,大腸疾患についての専門書や教科書は多く見られるが,肛門疾患に関する成書は非常に少ないのが現状である。日常診療では頻度の高い極めてありふれた疾病であるにもかかわらずである。結果,卒後研修のころから一般的に「痔」と呼んで軽んじて扱う傾向にある。その原因は,以前から肛門専門医の間で論じられてきたように,大学の医学教育や卒後研修の中で「肛門病学」が体系立てて指導されていない点にあるのみならず「肛門病学」の存在すら認められていない点にあるのではないだろうか。
過去にいくつかの専門書や教科書の分担執筆に携わった者として,今回の辻順行先生の編集された『肛門疾患診療の教科書』は,驚きや感動を感じた点があまた認められた。
まず,第一に斬新な手法で手術の動画を採用していることである。執筆者が自らの手術手技を半永久的にこのような形...
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