医学界新聞

スライド作成のABC

連載 柿崎真沙子

2024.01.08 週刊医学界新聞(レジデント号):第3548号より

 文章だけではわかりにくい説明も,図や表にまとめるとわかりやすくなることがよくあります。

 例えば地域別や組織別に項目を羅列している場合,箇条書きにするだけでもかなりわかりやすくなりますが,箇条書きを項目ごとにまとめて表にすると,比較がしやすくなり,さらに見やすくなる場合があります。異なる項目について年次比較をする時,種類別に示したい時や分類が必要な時も,表にするとわかりやすくなります。

 自分で文章を書いてみて「あれ? これ表にした方がすっきりするのでは?」と思ったら,いきなりパワーポイント上で作ると大変なので,ざっとノートやメモ帳に概要を書いてみると良いと思います。「こんな感じならいけそう」となったら,実際にパワーポイントで作ってみましょう。その際,気を付けるのは表の中のフォントが小さくなりすぎないようにすること,項目を整理することなどです。せっかく見やすくするために表を作るので,表にしたことでかえって視認性が悪くなるのは避けたいですね。

 一方で,図だけを載せても説明がないと何の図なのかわかりにくいこともあります。その時々で,図だけを示す,図と説明を一緒のスライドに入れる,と使い分けると良いでしょう。

 の上下はそれぞれ同じ内容を示しています。最初は上の数字のみの図を使っていたのですが,これだけで説明していても「ぱっと見てわかりにくくない……?」と思い,顔のアイコンがたくさんある下段の図を作りました。このように,数値の大小などをアイコンの数や大きさで表すと,ぱっと見て大小が把握しやすく,わかりやすくなります。

3548_0201.png
図 アイコンを使って見やすく
感度60%,特異度85%の検査の場合を例に,事後確率は事前確率に左右されることを示すスライドで用いた図のブラッシュアップ前(上)とブラッシュアップ後(下)です。検査前確率が変わると得られる検査結果が変わることをぱっと見でわかりやすくするため,数字ではなく顔のイラストのアイコンを用いました。

 また,流れをわかりやすくするため,元は箇条書きにしていた事柄をフローチャートに起こすこともよくあります。わざわざフローチャートを作らなくても,箇条書きの項目と項目の間に矢印を入れ,流れがわかるようにするだけでも,理解度が上がると思います。

 図やフローチャートについては,パワーポイント内,挿入タブにあるSmartArtを使うこともありますが,設定によっては図形の色がグラデーションになっていたり,テキストもデフォルトのままだったりします。連載第3回「スライドの背景とフォント」などを参考に,あまり複雑な図やフローチャートにせず,見やすく整えていただくのが良いと思います。

 フローチャートは前項で取り上げた通り,SmartArtで「これがいいかも」と思うものがあればそれを使って作ることが多いです。私は各省庁の資料を参考にフローチャートを作成することが多いですが,省庁の資料にはかなり細かく記載がされており,1枚の情報量が多くなっています。必要ない情報は削り,また,こちらが追加したいと思っている情報を加え,横へ流れるチャートを縦にするなど変更し,自前で作ることが多いです。

 とはいえ,図に起こすことはなかなか難しいと思いますので,①まずは言いたいことを箇条書きにしてみる,②流れがあるなら矢印のオブジェクトなどを追加してみてわかりやすくする,③分岐も出てきてどうやらフローチャートにしたほうが良さそうだと思ったらフローチャートを作ってみる,といった順番で作成してみると良いと思います。また,数値を表にしただけの場合や増加や減少といった表現がある場合,数値をアイコンの個数や大きさに変えてみたり,増加は上向き矢印,減少は下向き矢印などを加えてみたりするだけでもわかりやすくなることがあります。あまりごてごて矢印を加えすぎても見栄えが悪くなってしまうので,バランスを大事に,もともとのスライドに少し何か加えてみるところから始めてみることを勧めます。

 慣れてきたら,教科書や技術書,省庁のWebサイト,さまざまな組織や機関のWebサイトなどを見て,わかりやすい図を少しだけ記憶にとどめておく習慣をつけると良いかもしれません。その際,なぜわかりやすいと感じたかを考えてみましょう。単に文章の流れと図の流れが合っている,合っていないというだけでもわかりやすい,わかりにくい,の差が出たりしますので,実際作ってみる際には気をつけましょう。また,参考にする場合は引用元を明記することも大事ですのでその点も忘れないようにしてください。

 連載第5回「表やグラフを作る」でもお伝えしましたが,他の資料から図表をコピーしてくるよりも,実際にパワーポイント上で自分で図を作成しましょう。縮尺の問題もありますが,報告書や論文で用いられている図は情報量が多い場合もあるため,発表の対象者に合わせて適切な情報量のものを作成し直したほうが見やすくなります。疫学や公衆衛生学の分野では,対象者の選定をフローチャートで書くことが多いですが,こちらも論文で使用したフローチャートをそのまま載せるのではなく,パワーポイントに起こして書いたほうが視認性も良くなりますので,今まで論文に掲載したものをそのまま使っていた方は,こういった論文に掲載している図表から作り直すことから始めるとやりやすいと思います。


開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook