睡眠外来の診察室から
[第8話] 「受験を頑張りたい。夜はどれくらい寝たほうが良いのか」
連載 松井健太郎
2022.11.07 週刊医学界新聞(通常号):第3492号より
受験なんて嫌な思い出ばっかりである。
中学受験では塾から「80%以上受かる」とお墨付きを頂いた私立中学を初日に受験したところ,翌日あっさり不合格になった。2日目受験校の帰りの道すがら,終始無言でガードレールや駅の柱を優しく殴っていたことを記憶している。優しく殴っていたのは本気で殴ると痛いからである。
まさかの不合格は松井家に動揺をもたらした。翌日の夜,母が交通事故に遭ったのである。赤信号の横断歩道を渡ろうとしたらしい。そんな不注意な人ではないのに。
幸い母の命に別状はなく,尾骨骨折程度で済んだ。が,救急搬送から帰宅するまで父が全く連絡をよこさないので生きた心地がしなかった。私のメンタルはズタボロだったが,ぽこぽこ壁パンチの日の中高一貫校に拾っていただいていた。よかった……。
大学受験のハイライトは,予備校で知り合って良い感じだった女の子と突然コンタクトが取れなくなったことである。高3の秋だったと思う。共通の友人に「まっけんは××さんのこと好きなの?」と聞かれ,「ちがう」とかなんとか返答した(?)のがきっかけになってしまった。めちゃくちゃ好きだったが故に恥ずかしくて友人にも言えなかったのである。男子校に6年も通うとこうなる。
急に連絡が取れなくなったので,どっかに君の姿をいつでも捜しているよマンと化した私は複数の予備校の自習室を徘徊するなどしたが,全然会えずどん底であった。「受験を頑張ったら報われる」の一心でやけくそに勉強したところ,地元から離れた医学部に合格してしまい,その子とは何もなく終了。私は非モテをこじらすこととなった(合格はともかく,報われはしなかった)。
こんな私に受験のアドバイスを求められても困るのだが,そうか,睡眠にまつわる相談か。ならばきちんと回答せねばならない。
「受験を頑張りたい。夜はどれくらい寝たほうが良いのか」
受診に至る経緯はさまざまだが,受験期の若い方も睡眠外来に来られる。なお,たいてい本人よりも親御さんのほうが受験を気にされている。
一般に睡眠時間が短い学生は学業...
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