医学界新聞

書評

2022.05.16 週刊医学界新聞(レジデント号):第3469号より

《評者》 東京工科大教授・作業療法学

 私の作業療法士人生はハンドセラピィから始まった。二十数年前に村上恒二先生(広島大名誉教授)のご指導の下で,本書編者のお一人である飯塚照史先生と毎夜のように学び,そして議論をしたことを今でもよく覚えている。良好な術後成績には良い手術とハンドセラピィの両者が必要であることをさまざまな機会で耳にした。その後,私は手外科分野を離れたのだが,人生で一番熟読した医学書は手外科分野のものであることは今でも変わらない。私にとってこの分野は「ふに落ちる(答えがある)」ものが多く,書籍を読むことで時に感動すら覚えた。

 本書はハンドセラピストのための書籍とされている。私自身すでに門外漢と思いつつも,一通り目を通させていただいた。本書はハンドセラピィの基盤である機能解剖をまず詳説し,ハンドセラピィ特有の評価を網羅している。これは初学者の理解を深めることに最適である。治療に関しても関節可動域訓練や物理療法などを知見も踏まえながら提示しており,さらに多数の事例提示がなされている点は初学者のみならず熟練のハンドセラピストにとっても有用な知見になると思われる。このような初学者にも臨床家にとっても痒い所に手が届く本書の構成は,編者の先生方の顔触れを考えれば納得の構成であるといえる。また,QRコードからWeb動画にアクセスし,視聴して学べることは最大の利点の一つであろう。動画によるイメージは理解を促進するため,多くのセラピストがスマートフォンでQRコードを読み取り,学びの一助とする姿が目に浮かぶ(特に装具作成)。

 私は,本書の対象読者はハンドセラピィ領域にとどまらないと思う。ハンドセラピィの主な関心事である拘縮やその改善のための知識は,他の疾患領域のセラピストも持つべき内容である。さらに,装具に関しては,廃用予防のみならず,近年は課題指向型訓練などを...

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