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『百症例式 胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス』より

連載 拡大内視鏡×病理対比診断研究会 アトラス作成委員会

2021.10.29

 

近年,拡大内視鏡の登場・普及に伴い,これまで見えなかった所見が可視化され,臨床医であっても病理組織学的な所見をより一層意識した読影力が求められるようになってきました。この力を身に付けるため,好評書『百症例式 早期胃癌・早期食道癌 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング』の第2弾として編まれたのが『百症例式 胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス』です。医学界新聞プラスでは本書の中から3回にわたって内容を抜粋。連載第3回目には,「『百症例式』トレーニング」と題した読影力を鍛えるコーナーもあります。ぜひ最後までご覧ください。

通常観察(白色光)・IEE観察

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図1

    通常内視鏡像

    背景はまだらな発赤を認め,萎縮粘膜と診断する.
    前庭部小彎に発赤粘膜を認め,その周囲には黄色〜軽度発赤調の領域が広がっているのを認める.しかし,色調や段差で境界は不明瞭と思われた.

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図2,3

    NBI弱拡大像

    図2図3は同一の画像.
    NBI弱拡大では,背景は整った絨毛様構造であり,一部light blue crest(LBC)陽性を認め,腸上皮化生粘膜と診断する.
    一方,病変内部では大小不同を伴う小型で密な絨毛様構造を認め,white zone(WZ)の幅は不均一である.
    背景粘膜と病変内部の構造差から,境界を黄点線と考えた(図3).

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図4

    NBI中拡大像(病変前壁肛門側)

    緑線は図3緑線と同一部位を示す.
    背景粘膜は,管状構造と絨毛様構造が混在している.
    病変内部では大小不同を伴う小型で密な絨毛様構造を認め,WZの幅は不均一であった.構造差により病変境界を明瞭に認める.

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図5
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図6

    NBI中拡大像

    NBI中拡大にて病変内部を観察すると,背景粘膜と比較して,構造の大小不同は著しく,WZの幅は不均一である.また一部にLBC陽性を認める.
    図6図5の拡大像.
    病変内部には,やや腫大した絨毛様構造が認められる.
    強拡大(図6)にて観察すると,やや腫大した構造の内部には形状不均一な血管が認められる.同部はvessels within epithelial circle(VEC) patternと判断し,乳頭腺癌(pap)を疑った.
     

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図7

    NBI弱拡大像(病変肛門側)

    背景粘膜と病変内部の構造はともに絨毛様構造である.弱拡大での観察では,構造差で病変境界を認識することが難しい.
    次に同部の中拡大画像を提示する.

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図8
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図9

    NBI中拡大像

    図8図9は同一の画像.
    図7からやや近接して,NBI中拡大で観察を行うと,病変内部の絨毛様構造では,わずかにWZの幅が不均一である.
    それを手掛かりに,病変境界を黄点線のように判断した(図9).

マーキング・切除標本・病理組織像

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図10,11

    マーキング画像と新鮮切除標本

    図10のように,ESD術前の全周マーキングを行い,ESDにて一括切除した.図11に新鮮切除標本を,内視鏡画像と向きを合わせて提示する.

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図12,13

    ピオクタニン染色標本と黄枠部の拡大

    ピオクタニン染色標本の拡大(図13)では,中心部に構造不明瞭な領域と明らかに大小不同を伴う領域が認められる.しかし,その周囲にも軽度の構造不整を伴う領域が疑われ,はっきりとした病変範囲を認識することは困難であった.

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図14,15

    切除標本とプレパラート像

    ピオクタニン染色標本と病理組織像.図14緑枠部の拡大像を図15に示す.
    緑枠は病変内部の病理組織像を示しており,粘膜内に高分化型管状腺癌を認めるが,最表層において桃矢印の領域に非腫瘍腺窩上皮の混在が認められた.

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図16

    図15赤枠部の拡大像

    腺窩上皮の上に凸の部分は非腫瘍粘膜であり,凹の部分には高分化管状腺癌が認められる.

内視鏡像と切除標本,病理組織像の対比

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図17~20

    NBI画像とピオクタニン染色標本,病理組織像の対比

    黄・青線で示した構造がそれぞれ一致し,緑丸は術前の目印マークを示す.白点線は割線,青線が癌の範囲を示している.NBI所見で,やや腫大した絨毛様構造の内部に形状不均一な血管が認められた領域の組織像は黄四角領域に相当すると思われる.同部の拡大を図21に示す.

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図21

    図19黄枠部の拡大病理組織像

    粘膜内に高分化管状腺癌を認めた.腺窩上皮のうち,粘膜表層から突出した部分は非腫瘍粘膜であった.つまり,NBIでやや腫大した絨毛様構造と認識した部位は非腫瘍粘膜であったと思われた.

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図22~25

    NBI画像とピオクタニン染色標本,病理組織像の対比

    黄・緑・赤・青線で示した構造がそれぞれ一致し,白点線は割線を示す.青線が癌の範囲,青破線は表層を非腫瘍が被覆した領域を示している.
    病変肛門側では,病変と背景粘膜との構造差を認識することが難しく,境界診断に苦慮した.わずかにWZの幅が不均一であった領域を認識して,境界診断を行った結果,おおむね正診していた.境界領域の病理所見を確認するため,赤四角領域の拡大病理像を図26に示す.

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図26
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図27

    図25赤枠部の拡大病理組織像と図26黄枠部の拡大病理組織像

    図26において,青線の領域に癌が認められる.
    癌領域と非癌領域を比較すると,腺管密度に差がないことが分かる.図27において,粘膜内に高分化型管状腺癌を認めるが,最表層では桃矢印の領域に非腫瘍腺窩上皮の混在を認めた.
    境界診断に苦慮した理由として,癌と非癌の領域で腺管密度に差がないこと,また癌領域の内部に非腫瘍の腺窩上皮が多数混在していたことが挙げられた.内視鏡像と病理組織像を正確に対比することで,この振り返りが可能となった.

最終病理学的診断

Type 0-Ⅱc,29×17mm,tub1,pT1a(M),pUL0,Ly0,V0,pHM0,pVM0

この症例のポイント

除菌後胃癌では,癌領域に非腫瘍粘膜が混在すると,境界診断に苦慮する症例がある.その場合には,NBI拡大観察でWZの幅を詳細に観察することが大切である.

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