百症例式 早期胃癌・早期食道癌 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング
“見つけないと治せない”上部消化管癌の拾い上げ診断力向上のための厳選100症例!
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これぞ「百症例式」、“渾身の100本ノック”受けてみよ! 上部消化管癌の拾い上げ診断力向上のためには、厳選した良質な症例に数多く触れ、己の目と脳に焼き付けていくことが必要です! この一冊に、吉永繁高医師(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科)が厳選した、早期胃癌・早期食道癌の合計「100症例」をまとめました。迫力の「100症例」をご自身の内視鏡診断力向上にお役立てください!
著 | 吉永 繁高 |
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発行 | 2021年03月判型:B5頁:256 |
ISBN | 978-4-260-04328-1 |
定価 | 6,930円 (本体6,300円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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序
「見つけないと治せない」
当たり前のことですが,病気は見つけないと診断できません.さらに,診断できないと治療方針が決まりませんし,治療方針が決まらないと治療はできません.つまり,見つけないと治せません.2016年より対策型検診としての胃内視鏡検診が始まり,早期胃癌が見つかってくるようになりました.きっと本書を読まれている皆さまも多くの内視鏡検査をなさっていると思います.胃癌にはいろんな形態があり,同じものは1つもありません.そして,すべてが教科書に載っているような典型的な病変ではなく,病変として認識が難しいものもあります.しかし,多くの病変を見ることにより,経験を積み,病変として認識する能力が上がると私は信じています.もちろん,自分で多くの病変を診断することが経験を得る一番よい方法ですが,正直,そんなに多くの早期胃癌を自分で診断する機会を得ることは難しいと思います.その経験を擬似的に得るために成書を読み,学会,研究会に参加して多くの症例を見るべきだと思っています.もちろん胃癌だけでなく食道癌でも同じことがいえます.
本書は読者の皆さまがそのような経験を得るために国立がん研究センター中央病院での12年間に私が経験した症例を厳選し,できるだけ生検をされていないpureな形の胃癌・食道癌を100症例ご用意しました.コンセプトは1,000本ノックですが,さすがに1,000症例用意するのは大変ですし,紙面も足りませんので100本ノックでご容赦いただけましたら幸いです.100症例のなかには真正面に飛んできたり,イレギュラーバウンドもあったりもしますが,できるだけよいところにノックしているつもりですので,ぜひ「病変の拾い上げ」というグラウンドを駆け回ってください.
最後にこのような機会を与えてくださった医学書院の担当者,私をご指導くださった先輩,一緒に働き助けてくれた同僚・後輩,顕微鏡画像などをご準備,ご指導くださった病理の先生,そして日々支えてくれた家族に心より感謝いたします.
2021年2月
吉永繁高
目次
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I章 私が思うスクリーニングにおける拾い上げのコツ
1 スクリーニングで心がけるべきこと~安全で死角のない検査を目指せ~
2 スクリーニングで気をつけるべき所見~この所見に気をつけろ~
II章 胃癌症例集80症例
まとめ①
まとめ②
まとめ③
まとめ④
III章 食道癌症例集20症例
まとめ
Columns
人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない
前の検査所見を鵜呑みにしない
Nobody’s perfect
直感は間違えるけど,違和感は間違えない
やらずに後悔するより,やって後悔しよう
キーワード一覧
書評
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繰り返し熟読すれば,癌が光って見えてくる!
書評者:平澤 俊明(がん研有明病院上部消化管内科副部長)
「スクリーニング内視鏡に絶対的な自信がある」と言い切れる人はどのぐらいいるであろうか。癌を見逃しているのではないかと不安を持ちながら内視鏡検査をしている医師が多いのではないか。
上部消化管の早期癌は背景の炎症に紛れて,診断が難しい病変も多い。そのため,10%を超える上部消化管癌が内視鏡検査で見逃されている。しかも,癌の拾い上げの感度は内視鏡医により大きな差があるのが現状である。つまり,胃癌,食道癌は「見つけないと治せない」が,癌が初期の段階で発見されるかどうかは,内視鏡を握った医師に委ねられている。内視鏡医も日々努力をしているが,上部消化管癌の拾い上げ診断の技術は一朝一夕に身につくものではない。多くの病変を経験することにより早期癌が徐々に発見できるようになってくる。しかし,がんセンターのようなhigh volume centerで勉強する機会を持てる医師は少なく,早期癌の存在診断を勉強する良書もあまりない。
そのような背景から,『百症例式 早期胃癌・早期食道癌 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング』(著:吉永繁高)が,医学書院から刊行された。まさに,上部消化管癌の拾い上げに特化した,今求められている書籍といえる。吉永先生は長年,がん研究センター中央病院で上部消化管癌の診断と治療に携わり,私もよく一緒に仕事をさせていただいている。研究会での鋭い読影には定評があり,学会や研究会では引っ張りだこの超売れっ子内視鏡医である。その吉永先生の単著であり,これが面白くないはずがない。
I章は,食道癌,胃癌の発見についての総論である。若い先生を長年指導してきた吉永先生は,拾い上げ診断のコツ,ピットホールが何かを十分把握している。拾い上げ診断は,経験的で言語化が難しい領域でもある。それを見事に,わかりやすくまとめている。
II,III章は実践トレーニング――吉永先生の渾身の100本ノックだ。6枚の内視鏡画像から胃癌,食道癌を見つけるクイズ形式で,スラスラとページが進む。「百症例式」という名前の通り,早期胃癌80症例,早期食道癌20症例で,ボリューム満点だ。吉永先生が厳選した良質な症例は,難しい症例も多いが,いずれも拾い上げ診断を勉強する上で重要な症例である。また,解説も非常に明快で読みやすい。この100本ノックを繰り返し受けることにより,理屈ではなく,感覚として胃炎の中に隠れている胃癌に違和感を持つようになるだろう。
内視鏡を握る全ての医師に本書を手に取って熟読して欲しい。明日からの内視鏡で,癌が光って見えてくる!
ドックや検診に携わる内視鏡医,内視鏡治療に熱心な内視鏡医,さらにはベテラン内視鏡医にもぜひ薦めたい一冊
書評者:丸山 保彦(藤枝市立総合病院副院長・消化器内科)
本書は国立がん研究センター中央病院内視鏡科の吉永
吉永先生も序文で「見つけないと治せない」と述べているが,まずこれがスタートである。若い先生の内視鏡に関しての興味は,紹介されてくる症例の内視鏡的治療手技が中心になりがちであるが,まずは「発見すること」である。さらに色素をまいたり拡大観察したりするためには病変の存在に気付くことが出発点であり,その基本は通常観察(WLI)である。
本書は吉永先生の経験に基づく広い上げのコツが簡潔に記された後,胃癌80症例,食道癌20症例の計100症例から構成され,「百本ノック」と称している。1症例6枚の通常観察(WLI)の中から,病変を探し出し,次のページをめくると病変が写っているキー写真と色素撒布像やNBI撮影,切除標本のマクロ像などが提示され,図中の矢印とともに診断のポイントが簡潔に解説されている。症例によっては一目でわかるものから,う~んとうなるようなものもある。気付きにくい病変でも裏の解説を読んでから写真を見直すと病変が浮き出て見えてくる。それも的確な解答・解説によるもので,アニメチックなイラストも気軽に読める雰囲気を醸し出している。小生も内視鏡検査に長年携わり自分ではわかっているつもりでも,本書を通読する中で新たな発見がいくつもあった。
本書は今年(2021年)出版される数多くの内視鏡関連の新刊書の中でもベストセラー候補の筆頭格だと確信する。本書を手に取って一目見ればそのフレンドリーさが実感でき,熟読すれば奥に秘められたすごみに気付くであろう。ドックや検診に携わる内視鏡医はもちろん,内視鏡治療に夢中な若い情熱を持った内視鏡医,またベテランの内視鏡医にもぜひ薦めたい一冊である。
大会常連校の名コーチ,魂のノック
書評者:市原 真(JA北海道厚生連札幌厚生病院病理診断科主任部長)
「コンセプトは1,000本ノックですが,さすがに1,000症例用意するのは大変ですし,紙面も足りませんので100本ノックでご容赦いただけましたら幸いです。」(「序」より)
笑ってしまった。そうか,なるほど,本書はノックなのか。どれどれ。
明るく読みやすいデザイン。ポイントごとに用いられる印象的なフォント。冒頭に,吉永繁高先生の実践的かつ具体的な解説がある。野球部の門を叩いた新入部員の手を取って導いてくださるような印象を受ける。グラウンドに入ってグラブを着ける前に,ここまで細やかに「指導」が入るということに,ああ~名コーチだなあ~という感想。消化器内視鏡医にとっての基礎であり要でもある「拾い上げ」をとことんトレーニングしよう,という本書のコンセプトに納得する。じゃ,ノック,体験してみよっかな。これくらいのライトな気持ちで読み始められる。敷居が低い。でもこれは「罠」である。すぐに「百症例式ノック」が始まる。
1例目からものすごい球が飛んできた(比喩)。ひえっ,バックハンドでなんとか捕球したつもりが,グラブからこぼれ落ちている(比喩)。解説を読む。この解説がありがたい。一歩目の踏み出し方やグラブの角度などを,1本ノックするたびに解説してもらえる(比喩)。これは現実のノックよりもありがたいポイントだ。泥にまみれてもすぐに体勢を整えて,次の症例,次の症例と進みたくなる。「オナシャス!」と声を上げたくなる。
数例ほど納得のいく「捕球」(比喩)が続いたところで,強烈なライナー(比喩)が飛んでくる。横っ飛びしても足がついていかない(比喩)。「げっ,ここかよ……」。癌を見つけられなかった。致命的なエラーである(比喩)。なぜ自分が今回の球を捕れなかったのか(比喩)と,解説を読みながら考える。「難易度 ★★★★」とある。5段階評価の4番目。えっ,5番目じゃないのかと思わず二度見してしまう。「これくらい見つけないと普通に負けるぞ」と言われているような気持ち。鬼コーチの仁王立ち。まだだ,まだ終わらんよ。
40本,50本,ノックを続けていく。それにしても絶妙の打球だ(比喩)。捕れる気になった途端にギリギリ届かなさそうな,でも訓練すれば捕れそうな球(比喩)。「今のはうまく見つけられた!」と思うと,解説でコーチは分化度や深達度についてコメントしていたり,過去画像との比較を行っていたりもして,その程度で満足するな,と言われているかのようだ。20例ごとに振り返りが入るのもいい。強豪校のノックは構造的である。ただ症例を羅列しただけではなく,通読することで連関が起こるように,緻密に計算されている。索引代わりの巻末キーワードの妙。間違いなく名物ノックである。確実に上達する。
類書はない。得るものが多い。BGMは「栄冠は君に輝く」がふさわしい。いつしか私は汗にまみれていた。最後のは比喩ではない。
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