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百症例式 胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス

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「百症例式」第2弾は、胃の拡大内視鏡診断に自信をつけるための厳選118症例! このうち100例はスマホ/タブレット/PCでもトレーニングできます! 5つの拡大内視鏡研究会が症例を厳選し、拡大内視鏡像と病理組織像の高度な対比手法(KOTO methodなど)を用いて丁寧に解説しました! 拡大診断に必要な基本知識も最短で学べます! 本書を熟読し、拡大内視鏡像から病理組織像が思い浮かべば、あなたもエキスパート!

編集 拡大内視鏡×病理対比診断研究会 アトラス作成委員会
発行 2021年10月判型:B5頁:288
ISBN 978-4-260-04650-3
定価 6,930円 (本体6,300円+税)

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 『百症例式 胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス』の校正刷りが届いた.総論から始まり,細かいところまで手が行き届いた素晴らしいテキストである.Webを用いた100症例のトレーニングまで付いている.さすが,先駆的な若手の内視鏡医たちの発想である.このテキストを手にしてワクワクしている多くの内視鏡医たちが目に浮かぶ.

 さて,2006年に新潟拡大内視鏡研究会を立ち上げ数年を経てから札幌,東京,京都,奈良,神戸,岡山,高知と同様の拡大内視鏡研究会が立ち上がった.このテキストはそれらの会の中の西日本である京都,奈良,神戸,岡山,高知を率いてきたかたがたの執筆による.本書の編集を担当する「拡大内視鏡×病理対比診断研究会」とは,それらの5つの地方の研究会の総称ということである.このワクワクする内容は彼らの情熱そのものである.

 筆者は拡大内視鏡像から病理組織像を思い描くことの重要性を常に主張してきたが,このテキストにはそのポリシーがそのまま引き継がれている.うれしい限りである.

 執筆者たちから「病理組織を見据えた拡大内視鏡診断」と「楽しい新潟拡大内視鏡研究会」に触れて刺激され,それを追いかける研究会がうまれたことも序文に追加してほしい,というリクエストがあった.ここで応えたいと思う.

 コロナ禍となってから1年数カ月が経過している.この間,これらの拡大内視鏡研究会も中止やリモート開催となっている.このような研究会の楽しさは,大いに思考し,大いに議論し,そして会が終わってからはビールジョッキを片手に語り合うことにあると筆者は思っている.それができないことは本当に寂しいことである.リモートではなく,それぞれの拡大内視鏡研究会の会場で,本書の執筆者たちと直接会い,語り合える日が早く来ることを祈りたい.

 内視鏡を施行している先生がたには,胃の拡大内視鏡診断を牽引している若手内視鏡医によるこのテキストから,胃の拡大内視鏡診断の面白さをぜひ感じ取ってもらいたい.

 2021年8月
 新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院 消化器内科 八木一芳

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I章 総論
 拡大するには,まず病変を見つけねば! 病変の拾い上げと読影のお作法
 5分で理解する! 胃拡大内視鏡の基本――構造
  Column 1 どこまで? 何が見えてる? NBI原理
 5分で理解する! 胃拡大内視鏡の基本――血管
  Column 2 どこまで? NBIと違うの? BLI原理
 絶対に知っておくべき! 切除標本の扱いとマクロ像の撮り方――内視鏡医の立場から
 絶対に知っておくべき! 切除検体の取り扱いから組織標本の作製まで――病理医の立場から
 世界一わかりやすい! KOTO method(Kyoto One-To-One correspondence Method)
  Column 3 こんなことまでできちゃうんです! KOTO method II
 エキスパートの先生方を唸らせろ! 症例提示スライドの作り方とお作法

II章 症例提示
 症例1 H. pylori未感染胃癌――診断に苦慮した症例(70歳代,女性,ピロリ菌未感染)
 症例2 H. pylori未感染胃を背景とした病変,診断は?――血管の深度の対比ができた症例(60歳代,男性,ピロリ菌未感染)
 症例3 多彩な領域を有した粘膜内印環細胞癌の1例(70歳代,女性,ピロリ菌既感染)
 症例4 H. pylori未感染胃癌(70歳代,男性,ピロリ菌未感染)
 症例5 H. pylori除菌後胃癌――腫瘍と非腫瘍の混在(60歳代,女性,ピロリ菌除菌後)
 症例6 同一病変内で異なる内視鏡像を呈した胃癌(70歳代,男性,ピロリ菌除菌後)
 症例7 H. pylori除菌後胃癌――非腫瘍上皮の被覆(60歳代,男性,ピロリ菌除菌後)
 症例8 H. pylori除菌後胃癌――非腫瘍上皮の被覆,混在(70歳代,女性,ピロリ菌除菌後)
 症例9 多彩な組織像を呈した症例(60歳代,女性,ピロリ菌現感染)
 症例10 癌に見える非癌.この境界はなぜ生じたのか?(70歳代,男性,ピロリ菌現感染)
 症例11 隆起性病変の辺縁に広がる平坦病変(70歳代,男性,ピロリ菌現感染)
 症例12 VEC patternに見えた症例(70歳代,男性,ピロリ菌既感染)
 症例13 病変内に黒色の点を認めた早期胃癌の1例(60歳代,男性,ピロリ菌除菌後)
 症例14 異なる色調を呈し,その組織構築像が問題となった症例(70歳代,女性,ピロリ菌除菌後)
 症例15 特殊な形態を示した分化型胃癌の症例(80歳代,男性,ピロリ菌感染不明)
 症例16 診断が難しいH. pylori陰性胃病変(60歳代,男性,ピロリ菌除菌後)
 症例17 組織型診断が難しいH. pylori除菌後胃癌症例(60歳代,男性,ピロリ菌除菌後)
 症例18 H. pylori現感染胃癌――組織型と深達度診断が問題となった症例(60歳代,男性,ピロリ菌現感染)

III章「百症例式」トレーニング

索引
II章症例キーワード

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見事な対比から拡大内視鏡診断への情熱が伝わる良書
書評者:小山 恒男(佐久医療センター内視鏡内科部長)

 『百症例式 胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス』の書評を依頼され,書籍が届いた。

 まず,タイトルが長い。そして,表紙がチョットね。某アジア国の夜店に並んでいる本みたいである。

 いやいや,本は内容が勝負。まずは序説を拝読した。何と,敬愛する八木一芳先生ではないか! 急に興味が湧いてきた。

 編集を担当した「拡大内視鏡×病理対比診断研究会アトラス作成委員会」とは,京都,奈良,神戸,岡山,高知で,独自に開催されてきた拡大内視鏡研究会の総称とのこと。八木先生,八尾建史先生,藤崎順子先生,小生など胃拡大内視鏡診断の第1世代ではなく,各地で拡大内視鏡研究会を企画発展させてきた,第2世代のリーダーたちが制作に当たった書籍である。

 まずは,第I章の総論。胃観察の基本,胃癌病理の基本,切除標本の取り扱い,そして撮影法。実体顕微鏡があれば大変便利だが,買ってもらえない人でも,数万円のデジタルカメラで見事な撮影ができる。素晴らしい工夫である。

 そして,第II章ではよりすぐりの18例が提示され,拡大内視鏡画像と病理組織像が見事に対比されていた。もちろん,champion caseを提示したのであろうが,常日頃から熱心に拡大内視鏡観察し,切除標本を愛おしく扱わねば,このような見事な対比はできない。各執筆者が,いかに情熱を込めて拡大内視鏡診断とESDに取り組んできたのかが,よく伝わってきた。

 拡大内視鏡観察の作法は,フルズーム派と中拡大で表面構造を読む派に大別されるが,第II章に両派が混在していることも面白い。異なる師匠を持つ第2世代たちが,切磋琢磨して成長している姿が垣間見られる。

 第III章のWebを用いた100症例の「百症例式」トレーニングでは,医学書院のWebシステムを上手に活用しており,まさに新時代の内視鏡アトラスと言える。

 1990年代に手探りで拡大内視鏡の勉強を始めたが,もちろんテキストもアトラスもなかった。プロトタイプの拡大内視鏡で撮像した画像と,割入りの切除標本,組織像を1例1例対比して,表面構造と組織構築に関係があることを見出した。しかし,当時はEMR時代であり,分割切除標本では十分な対比は困難であった。「拡大内視鏡画像との対比が可能な,美しい一括切除標本を得たい!」。これがESDの開発に取り組んだ動機であった。1990年代の後半に針状ナイフでのESDに取り組み,試行錯誤を経て手作りのHookナイフに至った。1999年に第1例目の食道ESDに成功した時は,その美しい切除標本に感動した。

 切除標本と組織像を完璧に対比するには,まずは出血や焼灼のない,美しいESDを行うことが重要である。また,標本回収後にグズグズしていると組織融解が進み,きれいな組織像が得られなくなる。素早くピン打ちし,実体顕微鏡観察前に5分間ホルマリンの中へ入れることが肝要である。

 この素晴らしい書籍を制作してくれた「拡大内視鏡×病理対比診断研究会アトラス制作委員会」のメンバーたちへ感謝申し上げる。皆さんは,もう若手ではない。今後は指導者として内視鏡診断学をさらに発展させ,第3世代を育成してくれることを祈念し書評を終える。


内視鏡医と病理医の親密なる意見交換による拡大内視鏡像と病理組織像が厳密に対比された一冊
書評者:柳澤 昭夫(京都第一赤十字病院病理診断科特別顧問/京都医大大学院特任教授・人体病理学/名誉教授)

 胃癌の診断・治療の進歩は著しいものがある。拡大内視鏡の診断もその一つであるが,内視鏡診断において最も重要な点は,通常内視鏡観察による病変の認識である。病変の認識がない状態での拡大内視鏡観察や病理所見との対比は成り立たない。本書は,タイトル『胃の拡大内視鏡×病理対比アトラス』から推察されるように,内視鏡で観察された所見と病理組織像をより正確に1対1対応させることにより,内視鏡で観察される所見が,どのような組織形態により成り立っているか解説したものである。

 正しい内視鏡診断は,観察されている内視鏡像がどのような病理組織像により成り立っているか理解することで得られることは言うまでもない。本書を読むことにより,内視鏡観察により認識された病変が,どのような病理組織像により成り立っているか理解することで,病変の認識・診断が容易になるとともに,より興味深いものとなることが期待できる。

 内視鏡像と病理組織像の対比が行われている成書は多く出版されているが,本書のように内視鏡像と病理組織像がこれほど厳密に対比されているものはほとんどない。内視鏡像と病理組織像の対比は,内視鏡医と病理医との協力があって初めて成り立つものであり,両者の協力があって初めて,このような書籍が出版されることになる。本書を読んでいただければ理解されると思うが,実際にここまで厳密に拡大内視鏡像と病理組織像を対比した成書は,なかなか見当たらない。

 「I章 総論」では,まず拡大内視鏡の基本が明確,簡潔に述べられており,拡大内視鏡像を容易に理解することを可能にしている。次に,内視鏡所見と病理組織像とのより正確な対比方法が述べられている。内視鏡的に切除された標本と病理組織像をより正確に1対1対応させることは決して容易ではないが,その方法がより丁寧にわかりやすく解説されている。ここで紹介している“KOTO method”は,内視鏡観察所見が病理組織像のどのような形態を反映しているかを正確に知る上で重要な方法であることが理解される。そして,この方法で対比された内視鏡像と病理組織像が具体的に提示されているが,両画像の関係が一目瞭然であることがわかる。

 「II章 症例提示」では,通常内視鏡観察像,拡大内視鏡像,切除された標本像と“KOTO method”で1対1対応して得られた病理組織像が掲載されている。通常内視鏡観察像や拡大内視鏡像が,どのような病理組織像を基に形成されているかを理解する上で有用となることが期待される。

 内視鏡所見と病理組織像の対比は,あくまでも通常内視鏡観察で病変を見つけ,次のステップで生検などの確定診断を行い,内視鏡切除の治療が行われて可能となる。前述したように,通常内視鏡観察で病変を認識することが最も重要であることは言うまでもないが,このような内視鏡像で病理組織像を想定することにより,より正しい内視鏡診断が得られることが期待される。

 最後に,本書は,「序」で新潟大地域医療教育センター・魚沼基幹病院消化器内科 八木一芳先生が述べられているように,西日本の京都,奈良,神戸,岡山,高知の若手からなる拡大内視鏡研究会での症例を基に作成されたものである。研究会での内視鏡医と病理医の熱心な意見交換があって初めてこのような成書が成り立ったことが行間(写真間)から伝わってくる。このような病理医と内視鏡医との親密なる意見交換が行われることにより,ほとんどの胃癌が侵襲のない治療法で治癒されるようになるために,本書が貢献することが期待できる。

 

 

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