名画で鍛える診療のエッセンス
[第9回] 自分の感性を見つめ直す
連載 森永 康平
2021.06.14 週刊医学界新聞(レジデント号):第3424号より
雨と聞いて心がおどる人は,それほど多くないでしょう。雷雨となればなおさらです。
今回の名画では,レーザービームのように大胆に描かれた雷の姿と,逃げ惑う人々が描かれています。かつて雷は現代では想像できないほどの脅威であり,畏怖の対象だったことがわかります。
一方で雷には,田畑を潤す「恵みの雨」という恩恵の側面も大きかったようです。神社にあるしめ縄の白いひらひら(紙垂)のモチーフは,豊作を願い邪気を追い払う雷だとする説があります。雷は「稲妻」とも呼ばれます。古の日本人はすでに雷や雨が稲を豊かに実らせる存在だと確信し,言葉にしていたようです。

本来の日本語が持つ豊かさを味わう
日本人は季節や時間帯などで変化する機微を敏感に感じ取ってきました。それは例えば日本語における「雨」の表現の多さに表れています。雨が降る様子を示す,しとしと,ざーざー,パラパラなどのオノマトペ(擬音語・擬声語)。また,梅雨や夕立,土砂降り,秋雨,天気雨などの名詞。もし「雨が降る日=憂鬱」という単純化した価値観で判断していたら,表現にこれだけのバリエーションは生まれなかったでしょう。
「俳人に『あいにく』という言葉はない」というのは,人気のテレビ番組「プレバト!!」の俳句コーナーに登場する夏井いつき先生の言葉です。「あいにくの雨で,満開の桜を見そびれた」と落胆するのではなく,「これで,雨に打たれて散る桜の句が読める」と考える。実に含蓄があり,毎日をより楽......
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