医学界新聞

看護のアジェンダ

連載 井部 俊子

2021.05.31 週刊医学界新聞(看護号):第3422号より

 2020年7月10日,株式会社日本看護協会出版会では定例の企画会議が開催された。そこでは,コロナプロジェクト・リーダーの金子から書籍企画書が提示された。「当社では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後に看護職の体験記を出版している。今回のコロナ禍もそれらに匹敵する災害ととらえ,現場のナースの体験記を刊行してはどうかと考えた。医療職の活躍を紹介するような本や雑誌記事は多いが,本書は1人の医療専門職としての姿だけではなく,生活者としての本音も垣間見えるような本にしたい」というものであり,賛同を得た。

 仕様はA5判,横組み,300ページ程度,本体価格2000~2520円程度,刊行目標日は2021年2月上旬とし,内容構成案が議論された。Part 1は現場レポート,Part 2は個人の生活への影響,Part 3はナースたちの「コロナ日記」,Part 4は各種団体の活動,Part 5は教育機関のコロナ禍による影響となった。さらに,感染症学,ウイルス学,疫学などの医学的情報を〔解説〕として加え,コロナ禍の影響を受けた医療周辺業界や経済的な話題など幅広く執筆する〔コラム〕を設けることとした。

 次に執筆者である。まず,編集部員の推薦,SNSや雑誌告知などによる公募,特設サイトの開設などを通して広く募集することとした。

 こうして社の総力を挙げて取り組んだ成果が,『新型コロナウイルス ナースたちの現場レポート』(日本看護協会出版会)として結実した。2021年3月10日に第1版第1刷を発行,厚さ4 cmの本となった。

 〔現場レポート〕は全体の64%を占める。現場の第一線で活躍したナースたちの体験と思いがにじみ出る。File #001は「そんなことがあったな,といつか思うときが来るのか」と題して,クラスター発生の報道で注目された永寿総合病院看護部長・北川順子さんのレポートである。「ホームページから職員を割り出して電話やネットへの書き込みがあった」り,「仕事帰りに待ち伏せされ,話を聞かせてほしいという記者からの手紙を渡されたり,自宅まで付いてきたりされた職員...

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