名画で鍛える診療のエッセンス
[第7回] 視点の多様性を受容する
連載 森永 康平
2021.04.12 週刊医学界新聞(レジデント号):第3416号より
「視点の多様性」。言葉面だけではイメージが湧きにくいかもしれません。しかしアート作品を前にして対話を行うと,「さまざまな視点が存在し得る」ことが,鮮明に浮き彫りとなっていきます。
この名画からどのような物語を見いだしますか?

今回の名画では,まず中央にいる猫にならって外を眺めてみましょう。近くには田園の景色が広がっており,はるか遠くには空をバックに複数の鳥が舞い,美しい山がそびえています。筆者は空の様子から朝焼けかなと考えていたのですが,猫を飼っている筆者の友人は「朝には猫は暖かいところに縮こまっていて,窓沿いにいるはずはないから夕方だろう」という見事な推理を披露していました。
また左下にはかんざし,右下には茶碗と手ぬぐいが置いてあります。友人は「1本だけ外れているかんざしは女性が試しに着けてみたもの?」「手ぬぐいと茶碗は少し前まで使われていた余韻を感じる」と,それぞれの物語を見いだしていました。
実はこの絵は,鷲明神・富士山方面を眺める吉原遊郭の控部屋を表しています。吉原遊郭という情報を踏まえると,絵の印象や気付きが変化しませんか? 猫はただ外を眺めているのではなく,ここで働いている女性の「外に出たい」心情を代弁している,という見方もできるかもしれません。かんざしは女性の商売道具,手ぬぐいと茶碗は男性客のものでしょうか。
同作品を見てもそこからの気付...
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