医学界新聞

寄稿

2020.06.22



【視点】

臨床看護師が研究活動に取り組む意義

早瀬 純子(前・日本医科大学付属病院看護師)


 心臓血管外科手術を受けた患者では,周術期に受けた身体への侵襲がその後にも影響を及ぼし,術後せん妄を発症することが多い。術後せん妄が遷延すると,患者や家族が精神的・肉体的に苦しみ,入院期間が延びて医療費負担も増えることになる。「一番つらいのは患者なのだが……」と理解はしているものの,私たち看護師も昼夜問わずの不穏対応に疲れ果ててしまう。

 そうした状況に鑑み,胸部大動脈瘤患者の術後せん妄,特に遷延についての研究を開始し,このたび検討した内容が原著論文として医学系雑誌に掲載される1)。本稿では,臨床看護師が研究活動に取り組む意義について私見を交えお伝えしたい。

臨床看護師だからこそ気付けたこと

 この研究で特に驚いたことは“せん妄の発症”に関連することで知られているベンゾジアゼピン系薬剤が“せん妄の遷延”と有意に関連するという結果だった。研究当時,ベンゾジアゼピン系薬剤は,不眠・不穏時の指示として一般的に用いられていたため,影響を与えているとは思いもしなかった。

 私の勤務していた病院では対象患者に対し,研究を開始する前よりせん妄評価ツールであるICDSC2)を活用して病棟独自に作成した術後せん妄評価シートを入院時から導入していたが,研究結果を受けて評価シートにさらなる改良を行った。主に改良したのは,ベンゾジアゼピン系薬剤の使用状況と疼痛評価の項目を新たに設け,アセスメントを手助けする点である。また,集中治療室との連携をめざして入室前に情報を共有するなどのせん妄対策に取り組んでいたこともあり,ベンゾジアゼピン系薬剤に関連するリスク,疼痛管理,早期回復と遷延予防への意識向上に貢献し,毎年調査する病棟における術後...

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