グラフィックレコーディングのはじめかた
[Lesson 5] 実際に描いてみよう! イラスト編
連載 岸 智子
2020.04.13
前回(Lesson 4)に引き続き,具体的な描き方をご紹介します。今回は簡単なイラストの描き方です。
1つのイラストから意味を広げて考えてみる
読者の中には「絵が苦手」「絵心がないから私にグラフィックレコーディングはムリ!」と考える方もいるでしょう。けれどもグラフィックレコーディングでは,イラストを必ず描かなければならないわけではなく,精緻に描く必要もありません。あくまでもテキストだけでは伝わらないその場の雰囲気や温度を伝えるための補助ツールです。
実はイラストを描くこと自体は難しくありません。なぜなら,大抵のものは○,△,□,それに直線と曲線で描けてしまうからです。「え? 本当に!?」と思った方もいるでしょう。まずは,一つの例から考えてみます。
例えば,下のイラストのように,△と□で「おにぎり」を描きます。「おにぎり」は,お昼時に手軽に食べるものでもあるので「ランチ」を表すイラストとして代用できます。また,屋外で食べるイメージもあることから「ピクニック」にも応用できるでしょう。これだけで1つのイラストから3つの意味を持たせることができました。
勘の鋭い読者の皆さまなら気付かれているかもしれませんが,「○,△,□で大抵のイラストは描ける」と表現したのは,こうした発想力のおかげです。つまり,写実的にそのままズバリを描かなくても,イラストの解釈次第で誰にでも描けるのです。
発想力次第で表現できるものは無限大!!
では,より具体的なイラストの描き方を見ていきましょう。まずは,「〇」を使って描けるイラストをいくつかご紹介します。例えば,へたをつけて「リンゴ」,縫い目を描いて「ボール」,大陸を描いて「地球」など,ほんの少しの工夫でそれらしく見えてくると思います。これらについても連想ゲームのように意味を拡大して考えてみましょう。
最初は「リンゴ」です。リンゴはフルーツの中の1つですので「フルーツ」,「フルーツ」はおやつ時に食べることが多いので「おやつ」,おやつを食べる時は休憩時間なので「休憩」……,といったようにイメージを膨らますことができます。同様に,ボール→スポーツ→余暇→趣味……,地球→地図→世界(グローバル)……と,イラストが1つ描けるようになれば,その何倍もの活用方法が見つかります。意味を拡大解釈していくことで,抽象的なものも表現できるのです。
続いては「△」と「□」の組み合わせです。これらから表される代表的なものは「家」です。このイメージは,建物としての「家」を表現することはもちろん,「家庭」という意味も包含します。グラレコを行う上では発想の転換も大事な要素です。例えば,「家庭」という言葉を図案化してくださいとお願いされたら,皆さん困りますよね。家族構成や一家団らんの様子を描くことで解決できるかもしれませんが,その場合は高い画力を求められるはずです。そんなときには,「家庭」=「家」と変換することで,一見表現しづらい抽象的な言葉を表現してしまいましょう。
「仕事」という言葉でも同じです。この場合は「場所」に注目します。例えば,ビジネスマンはどこで働いているでしょうか。大きな高層ビルを連想する方も多いと思います。そこで,「ビル」=「仕事」と結び付ければいいのです。もちろん,パソコンのイラストを描くことでも「仕事」を表すことができますね。
グラレコにピクトグラムを生かす
私たちは日ごろ,地図や記号などから自然と「何か」を表すものに触れています。例えば,下のイラストのように凸のマークに窓をいくつか描いた図形です。突起の部分に「時計」を描くと「学校」に,「十字」を描くと「病院」になります。
このように表現したいことを簡単でシンプルな図にしたものは「ピクトグラム」と呼ばれます。車いすのマークで「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」,たばこに斜線を引くことで「禁煙」を表すピクトグラムは皆さんにもなじみがあるでしょう。街中で見掛けるピクトグラムはグラフィックレコーディングの参考になります。「これ描けそう!」と思った図形はどんどん取り入れていきましょう。
繰り返しになりますが,グラフィックレコーディングで描かれるイラストは写実的である必要は全くありません。簡単な記号の組み合わせで表現できるものばかりです。表現できるものは解釈次第で無限に広がりますので,ぜひ楽しみながら自分ならではのイラストを描いてみてください。
(つづく)
岸 智子(きし・ともこ)氏 福岡女子大学社会人学び直しプログラム コーディネーター
小売業,情報サービス企業で会社員として店舗企画,人材開発などの業務に従事する傍ら、産業能率大大学院総合マネジメント研究科を修了。2014年より現職。現在は、グラレコの普及活動や多様な働き方を応援するコミュニティ「キャリアバラエティ」の運営を手掛ける。
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