第23回日本看護管理学会開催
2019.10.28
第23回日本看護管理学会開催
前田樹海氏 |
AIは患者・医療者を支えるパートナー
近年,総合病院では高齢化により増加するハイリスク重症患者への対応が求められている。その対策の一つとして,鶴嶋英夫氏(筑波大)は,入院患者の夜間の排尿や転倒・転落の予兆をウェアラブルのセンシング技術によって検知できるかを研究中だ。夜間歩行前の仰臥位での体動持続時間と離床時刻に着目した氏の検討では,15件中14件で夜間の患者行動を予測し得た。「ウェアラブルデバイスを用いた患者モニタリングは遠隔医療とも相性が良く,医療過疎地での応用にもつながる」と氏は今後の展望を述べた。
看護分野へのAI導入によって,患者に対する「正確なリスク評価」と医療者の「効果的かつ効率的なケアの実現」が可能になると主張したのはNTT東日本関東病院看護部の中尾正寿氏。同院では国際的な医療機能評価であるJCIの認定を受けるため,認定に重要な評価指標である転倒・転落患者数の低減を目的に,FRONTEOヘルスケア社の言語解析AI「Concept Encoder」を応用した業務改善システムの開発を行っている。開発に携わったエンジニアとして中尾氏と共に登壇した同社の内山秀文氏によると,本システムの特徴はConcept Encoderを活用し過去の約52万件に及ぶ看護記録をAIに学習させ,転倒・転落が起こる可能性の高い因子を分析したことで,学習したAIが日々の看護記録の内容を解析して7日以内に転倒・転落する可能性の高い患者を導き出す点にあるという。中尾氏は精度および機能向上のため本システムのさらなる改良を継続するとしながらも,AIの将来像として「AIを活用して患者ニーズや変化を読み解くことで,より安全な医療を提供できる。AIは患者・医療者を支えるパートナーとして認識すべき」と会場に呼び掛けた。
北原国際病院は,AI技術の医療応用を進めるNEC社と共に,診断業務やリハビリの補助,リスク管理などのさまざまなAIシステム開発に取り組む。同院で実施される数多くの研究の中で,現在最も成果を上げているのが不穏予兆検知の研究だ。患者の重篤化リスクの低減や医療スタッフの負担軽減を目的とした本研究は,患者の手首に巻いたセンサーからバイタルデータを,病室に置いたカメラ映像から患者の動作や音声データを取得し,不穏の可能性が高い患者がいればアラートが出るよう工夫されている。この取り組みにより,不穏発生の40分前に71%の確率で不穏予兆の検知が可能であったと同院看護科の森口真由美氏は報告した。一方で氏は,「IoTやAIの導入は看護業務の負担を軽減しながら業務の質を維持・向上させるものの,AIが導き出した以上の医療を提供できるかどうかが,これからの看護スキル向上における課題」と指摘。AIが臨床に導入される近未来においては,「看護について考える力」を強化することが重要であると述べ,看護師の意識変革を求めた。
現場に即した研修テーマの設定を
2日目に開催されたランチョンセミナー「院内研修あるあるお悩み相談」(講師=京大・任和子氏,京大病院・井川順子氏,共催=医学書院)では,労務管理や外部講師の手配などの院内研修にまつわる種々の悩みについて,京大病院における取り組みを紹介した。
自由参加の研修会で「出席したい」と思える研修会のテーマとは何か。2~3年目の看護師の集合研修が盛り上がらないとの質問を受け,任氏が課題として取り上げたのは院内研修のテーマづくりである。研修テーマが日常業務につながらない内容であったり,すぐに使えなかったりすると,受講者側も興味が湧きにくく,盛り上がりに欠けてしまうと指摘。過去の業務経験や日常業務の問題と結び付けるなど,受講者が思わず学びたくなるような研修の仕掛けが必要だと強調した。
医学書院ランチョンセミナーで京大病院の取り組みを紹介する任氏(壇上左)。 |
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