MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2019.08.26
Medical Library 書評・新刊案内
池淵 恵美 著
《評者》向谷地 生良(北海道医療大学/浦河べてるの家)
「専門家の無力」を受け容れること,「当事者の力」を信じること
本書を読み終えた後,私は不思議な感慨に満たされていました。それは,著者と重なる40年に及ぶ実践現場で味わった惨めさや行き詰まりなどを含めた全ての事柄を「わかるよ」と受け止めてもらえたような気持ちになったからです。
東京の大学病院と北海道の片田舎(浦河町)にある病院という両極端な地域背景と,医師とソーシャルワーカーという決定的な立場の違いを超えて,2つの現場を結び付けたのは,著者らによって1988年に東大病院デイホスピタルに招かれた米カリフォルニア大のロバート・P・リバーマン(Robert Paul Liberman)が開発したSST(社会生活技能訓練)でした。
私がSSTに最初に触れたのは,30年前に札幌で開催された前田ケイ先生(ルーテル学院大名誉教授)による講演でした。そこで私はSSTの持つ「素性」に限りない可能性を感じ取り,こころが熱くなったことを覚えています。このSSTの登場は,今日の精神障害リハビリテーションの中心概念となっている「リカバリー」の基本理念が,初めてわが国に導入される契機となったもので,精神医療を支えるパターナリスティックな治療・援助構造に根本...
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
“19番目の専門医”,「総合診療医」の仕事とは?
可視化と言語化で総合診療へのモヤモヤをスッキリ解決!寄稿 2025.09.09
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?
『医薬品情報のひきだし』より連載 2022.08.05
最新の記事
-
対談・座談会 2025.09.09
-
看護におけるコンフリクト・マネジメント
対立を乗り越え,より良い組織を築く対談・座談会 2025.09.09
-
対談・座談会 2025.09.09
-
“19番目の専門医”,「総合診療医」の仕事とは?
可視化と言語化で総合診療へのモヤモヤをスッキリ解決!寄稿 2025.09.09
-
がんゲノム医療と緩和ケアの融合
進歩するがん治療をどう支えるか寄稿 2025.09.09
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。