医学界新聞

一歩進んだ臨床判断

連載 谷崎 隆太郎

2019.07.22



一歩進んだ臨床判断

外来・病棟などあらゆる場面で遭遇する機会の多い感染症を中心に,明日からの診療とケアに使える実践的な思考回路とスキルを磨きましょう。

[第1回]バイタルサインの評価のコツ

谷崎 隆太郎(市立伊勢総合病院内科・総合診療科副部長)


こんな時どう考える?

 ある日の夜勤中,あなたは検温のため患者(83歳女性,誤嚥性肺炎の治療後で退院調整中)のもとを訪れた。すると,どうも患者の様子がおかしい……。体温を測ると38.0℃。医師の事前指示を確認したところ,発熱時の指示がないことに気が付いた。さて,この患者のアセスメントに際し,他にどのような情報収集が必要だろうか?

 感染症の患者さんは,どの病棟でも見掛けますよね。感染症患者にかかわる看護師の仕事には,患者の状態を正確に評価し,医師に最初に報告する大切な役割があります。それだけでなく,血液培養をはじめとした検体の採取・保存,静注抗菌薬の準備・投与など,多岐にわたる知識とスキルが要求されています(いつもありがとうございます)。

 さて,第1回は感染症におけるバイタルサインの診かたについてお話しします。バイタルサインと言えば,体温,血圧,脈拍数,意識……そう,あとは呼吸数ですね! 最初に強調したいのは,呼吸数はとっても大事! ということです。

呼吸数から重症化の徴候を察知する

 まずは感染症の患者さんがどのように悪化していくのかを知りましょう。全ての感染症に言えるのは,重症化すると敗血症という状態になり,さらには敗血症性ショックの状態に陥ることです。ショック,というくらいですからこの段階では当然,血圧が下がるわけですが,できれば血圧の下降に至るまでに敗血症に気付きたいものです。

 実は,血圧が低下する前には脈拍数が増加することが多く,そして,脈拍数が増加する前には呼吸数が増加することが多いのです。すなわち,「頻呼吸が重症化の最初の徴候として現れることがある!」のです。呼吸数の正常範囲は 12~20 回/分ですから,20回/分を超えている時は頻呼吸と考えて身構えましょう。

 そしてもう一つ大事なことがあります。潜在的に心機能が低下している高齢者や,脈拍を遅くする作用のあるβ遮断薬内服中の方では,敗血症になっても脈拍が上がりにくいので,「呼吸数増加→(そんなに頻脈じゃないのに)→いきなり血圧低下」のパターンが起こり得るので厄介です。さらに,感染症の中には,敗血症で発熱しているのにそもそも頻脈にならない,「比較的徐脈」と呼ばれるものもあります。つまり,より早期に重症化の徴候を察知するためにも,ぜひ

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