リフレクションで増やす,実践のレパートリー(政岡祐輝)
連載
2018.01.22
院内研修の作り方・考え方
臨床現場で行われる研修会や勉強会をより効果・効率・魅力的な内容にするために,インストラクショナルデザインを用いた研修設計をご紹介します。初めて教育委員を任された「はじめさん」,頼れるベテラン看護師「ゆう先輩」と一緒に,教育を専門に学んでいなくても自信を持って教えられるスキルを学びましょう。
【第10回】リフレクションで増やす,実践のレパートリー
政岡 祐輝(国立循環器病研究センター副看護師長/熊本大学教授システム学研究センター連携研究員)
(前回よりつづく)
行為の中の内省,行為に向けた内省
(はじめさん) 前回(第9回・第3252号)では,フィードバックが重要だと知りました。でも,そもそもフィードバックって何をすればいいかわかりません。ダメだった点を伝えることですか?
(ゆう先輩) フィードバックは,「事実・結果を伝え,その事実や結果から自らの行為等を振り返り,改善を図ってもらうこと」だよ。具体的に説明していこう!
フィードバックとは,看護学生時代の解剖生理学の授業で出てきた,恒常性を維持するための正負のフィードバック機構のフィードバックと同じです。教育で用いられるフィードバックは,「上手くいった/上手くいかなかったパフォーマンスの結果から,今後のパフォーマンスを改善させること」を意味します。
今後のパフォーマンスを改善させるにはどうすればよいでしょう。それには,結果およびその結果を導いた行為・思考・感情をしっかりと認識すること,そして結果を分析し改善策を導き出すための振り返りを行うことの2つが重要となります。後者の「振り返り」とは,看護界でも昨今よく耳にするようになった「リフレクション」のことです。
リフレクションは大きく2つに分けることができます1,2)。1つは,実践中に得た患者の反応に対し,過去の経験から学んだ自分のレパートリーを活用しながら問題解決に導く「行為の中の内省(Reflection in action)」,もう1つは,実践が終わった後に,行った実践を対象化して行う「行為に向けた内省(Reflection on action)」です(図)。この2つの循環によってパフォーマンスの改善を図っていきます。
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図 リフレクションの思考様式(筆者作成) |
失敗から振り返りまで
(はじめさん) フィードバックとリフレクションの意味はわかりました。研修に参加してくれた自部署のスタッフには使えそうですが,他病棟のスタッフにはどうしたらいいですか?
それぞれの病棟の看護師長や教育担当者の協力を仰ぐ必要があると,前回教えてもらいました。でも,環境を整えるには少し時間がかかりそうなんです……。研修の中でできる工夫って,何かありませんか?
(ゆう先輩) もちろん,あるよ。今回はシミュレーション学習の場面を想定して紹介しよう。
シミュレーション学習は,模擬的な実践場面を作り出し,その結果に対して振り返ることができます。そのため,図のリフレクションの思考様式をそのまま活用することができる教育方法です。シミュレーション学習の設計に関しては,第6回(第3241号)でGBS理論を紹介しました。GBS理論にもあったフィードバックの項目について,今回はもう少し具体的なポイントをお伝えします。
シミュレーショ...
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