辞め方の美学(井部俊子)
連載
2017.11.27
看護のアジェンダ | |
看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加国際大学名誉教授 |
(前回よりつづく)
先月,ある病院の事務局長から電話があった。看護部長が「辞めます」と言ってきた。翌日,事務局長が慰留したところ,「(看護部長を)やっていきます」と答えたという。つまり,この看護部長は一日にして辞意を撤回したわけである。
「辞めます」を交渉の道具として使う看護管理者もいる。自分が要求していることが通らないと「辞めさせていただきます」と頻繁に軽々と口にする師長に対し,私は看護部長としていさめたことがある。さらに,「次に辞めるというときは本当に辞めなければなりません」と申し渡した。それから数か月後,彼女は退職した。
新たに看護部長となったAからの“相談”がメールで寄せられる。副看護部長であったAを看護部長に推挙した前看護部長は年度末で退職するもの,とAは思っていた。しかし,“顧問”として残留し,いろいろと院政を敷いた。つまり,引退したはずの人がなお実権を握って取り仕切っているのである。組織図上はAの部下となるはずの副看護部長が,前看護部長の非公式指示を受ける。新年度になったのにAの体制が構築できないのである。
看護部長時代の苦い経験
私自身の苦い経験もある。私は看護部長を退任すると決断したあと,退職日を年度末の3月31日とせずに新年度に入った4月末とした。後任人事の決定が遅れていたこともあって,新入職員のオリエンテーションなどを行い,新年度の体制を整えて退職しようという“配慮”であった(内心,看護部長職に未練があったからだと今では考えている)。この配慮は不要であったと,後にある病棟師長に聞かされた。新年度は新しい体制で出発したほうがやりやすいというのである。よかれと思ってやったことがあだになるとはこういうことであると実感した。辞めるときは潔く辞めなければならないと思った。
部門トップが辞める
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