医学界新聞

2017.07.17



第22回日本緩和医療学会開催


 第22回日本緩和医療学会学術大会(大会長=帝京大・有賀悦子氏)が6月23~24日,パシフィコ横浜(横浜市)にて医師・看護師ら8857人の参加者を集め開催された。本紙では,二人主治医制を実施する意義と,在宅における医療用麻薬の使用推進について議論された2つのシンポジウムについて報告する。


患者に伴走する二人主治医制

 がん治療を受ける患者に対しては,生活全般を見る視点が欠かせない。シンポジウム「腫瘍内科と緩和ケアが力を合わせて伴走する二人主治医制」(座長=あおぞら診療所・川越正平氏,千葉県がんセンター・坂下美彦氏)では,初めに座長の川越氏が趣旨説明を行った。がん患者が早期から必要としている支援例として,①疾病や症状に関する理解の助け,②自己管理の方法を知り,日々の生活に活かすこと,③情報収集を支援してもらい,質を吟味すること,④患者家族の不安や相談を受け止めてもらい,孤立を防ぐこと,⑤Advance Care Planningに関する継続的な支援の5つを提示。「腫瘍内科医は患者に対し,化学療法施行の早期からかかりつけ医を持つことを推奨してほしい」と述べ,切れ目のない支援の必要性を強調した。

 続いて登壇したのは,腫瘍内科医の菓子井達彦氏(富山大病院)。在宅緩和ケアにおける在宅看取りの要因を明らかにする氏らの研究から,在宅看取り率の変化,在宅看取り・自宅で過ごした割合への影響因子に,在宅医・訪問看護師の緩和ケア継続教育プログラム「PEACE」の受講があると報告した。地域連携パスの使用が自宅で過ごした割合に影響を与えることも判明しており,質の高い在宅緩和ケアの達成に「PEACE受講と連携パス作成はgood factorになる」と話した。

 「最期まで患者を困らせない,見放さないことが大切」。こう語った廣橋猛氏(永寿総合病院)は,外来から在宅へ移行する「連携」は患者にとって大きな不安になるため,二人主治医制による「並行」の関係が重要と指摘した。二人の医師に診てもらうことで患者も意思決定ができ,「見捨てられるのでは」という不安の払拭につながると意義を語り,二人主治医制には医師同士の役割分担や相互連絡を密に行うことが不可欠と強調した。

 森清氏(村山大和診療所)は,在宅医として二人主治医制にかかわる。化学療法の効果が乏しくなった段階での在宅への移行は,患者・家族に不安や戸惑いを与えることもある。一方で,療養の場が自宅になることで,在宅医の他,訪問看護師やケアマネジャーら多職種のかかわりや配慮が増えるため,患者は病院にいるときに比べ自分の人生の方針を決めやすくなるという。「家に帰ることが“当たり前”になるよう,連携,調整,統合を進めてほしい」と呼び掛けた。

在宅緩和ケアの医療用麻薬使用推進には「病診薬」の連携を

 在宅緩和ケアのニーズが高まる一方で,緩和ケアに欠かせない医療用麻薬の在宅での使用には,病院とは異なる課題がある。シンポジウム「在宅医療における医療用麻薬の使用推進を考える」(座長=東女医大東医療センター・伊東俊雅氏,愛知県がんセンター中央病院・立松三千子氏)では,訪問看護師,在宅医,薬局,病院薬剤師の立場から議論がなされた。

 在宅緩和ケアを実施する訪...

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