医学界新聞

2017.02.27



Medical Library 書評・新刊案内


アクティブラーニングをこえた
看護教育を実現する
与えられた学びから意志ある学びへ

鈴木 敏恵 著

《評 者》岡田 久香(国立病院機構岡山医療センター看護部長)

看護教育における実学の書

 看護教育を支えているのは,臨床で勤務する多くの看護職です。教育に関する十分な知識を持たないままに,自分の受けた教育と同じような方法で看護学生や新人看護師を指導しています。結果,うまくいかなくて自分自身を責めた経験のある方も多いのではないかと思います。

 2010年4月に新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化されました。看護の質向上,医療安全の確保,早期離職防止の観点から,新人看護職員研修は不可欠です。現場での実施も努力義務とされたことから,指導者育成は現場の重要な課題となりました。指導者のための研修や書籍など,指導者の学ぶ機会は増えつつありますが,十分と言うにはほど遠い状況です。教育の知識が不十分でも実践が求められる看護職にとって,本書は看護教育における実学の書です。

 第I章「さあ看護教育を新しく魅力的にしよう!」では,IT化された現代の教育や看護教育の方向性について書かれています。看護における「創造的な思考」とは「“唯一,その患者のその状況にとって最適解”の判断,行動」と看護の普遍性に触れ,「次世代教育プロジェクト学習(Project Based Learning;以下,プロジェクト学習と略す)」の有用性を説いています。

 第II章「学び続ける看護師になる新しい3つの教育手法」ではプロジェクト学習の展開方法,成果や実績をつづるポートフォリオ,「しっかり教えているのにできないのはなぜ?」を解明し,学習者の思考を促すコーチングから自己成長のためのセルフコーチングの効果につなげる方法が具体的に述べられています。

 第III章「思考リテラシーの修得」では「考える力」の前提条件が示され,課題発見から解決までの思考プロセスと評価の考え方,ポートフォリオを通して学習者の「思考プロセス」を顕在化して,学習者を成長に導く過程が具体的に述べられています。「心馳せのふるまい」を評価することも看護師としての大切な心の成長につながります。

 第IV~VII章ではプロジェクト学習を看護基礎教育へ導入するための提案が述べられています。看護教員や看護学生とのかかわりの深さをほうふつとさせる具体的な記述は看護教育関係者にさまざまな示唆を与える内容です。

 本書は平易な文章とわかりやすい文章構成で組み立てられています。また,写真,イラスト,注釈,図,グラフなどを活用し,初学者にも理解しやすい内容となっています。よって,これから看護学生や新人教育に携わろうとする方には,看護教育への...

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