医学界新聞

インタビュー

2015.10.26



【interview】

看護現場に“NURSE”を広めていきたい
淺沼 智恵氏,栗原 美穂氏,關本 翌子氏(国立がん研究センター東病院看護部)に聞く


【関連記事もご参照ください】
看護師のためのコミュニケーションスキル研修――患者の感情表出を促す“NURSE”


――“SPIKES”,“SHARE”など,がん領域にはさまざまなコミュニケーションスキルがあります。なぜ“NURSE”を採用したのでしょうか。

關本 看護師には,看護師のために特化したコミュニケーションスキルが必要だと考えたからです。かつては当院でも,看護師にも“SPIKES”の研修を行っていました。しかし,“SPIKES”はもともと医師が悪い知らせを患者さんの気持ちに配慮しながら伝えるために開発されたスキルです。研修をするうちに看護師に必要なのは,「伝えるスキル」よりも「伝えられた後の患者さん・ご家族の感情に寄り添い,感情を吐露させるスキル」なのではないかと気付きました。

 そういったスキルを探していたところ,当時静岡県立静岡がんセンターに在籍していた臨床心理士の大庭章先生に,Backの論文1)から“NURSE”を紹介していただきました。これだ!と直感して,自分たちで翻訳しながら,テキストやロールプレイの台本などを作り上げていきました。

患者と効果的にかかわり,多忙な中でも生き生き働く

写真 左から順に,栗原美穂副看護部長,淺沼智恵看護部長,關本翌子副看護部長
栗原 傾聴・共感からさらに一歩踏み込むことで,堰を切ったように患者さんの感情表出が促進された例もあります。“NURSE”を使い始めて今年で10年目。受講者に自信の向上が見られるなど,効果を実感しています。

淺沼 私は“NURSE”研修ができてから当院の看護部長に就任したのですが,他院と当院で雰囲気の違いを感じました。急性期病院では,在院日数の短さや業務の膨大さにより,目の前の処置をこなすだけの看護になり,看護師が疲弊してしまうこともあるのではないでしょうか。

 当院では,多忙な中でも看護師が患者さんとよく話をしていますし,他職種とのコミュニケーションも上手です。そのためか,看護師が生き生きと働いている印象を受けました。

關本 時々,「日々の業務が忙しくて患者さんと話をする時間がない」という声も聞かれるのですが,時間をかければよいというものではありません。ロールプレイでも,実際に患者さんと会話している時間は15-20分程度です。

 指針となるスキルがないころは,意欲がある看護師さんの場合,話し込んでしまって患者さんの部屋から何時間も戻ってこないこともありましたが,今では短い時間でも効率的・効果的にかかわれるようになりました。

栗原 コミュニケーション能力は人柄や性格の問題とされがちですが,身につけられるスキルです。聞き方や引き出し方の手掛かりを頭の中に置き,深く考えながらケアを行う効果を,ぜひロールプレイで実感してほしいです。

振り返り,考え,気付くためのロールプレイ

――なぜ研修の対象を経験年数4年以上の看護師としているのでしょうか。

關本 “NURSE”を学ぶ以前に,患者さんやご家族への基本的な看護の姿勢を身につけておくことが必要だからです。

 当院では,1-3年目でがん患者のアセスメント,意思決定支援,看護倫理...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook