医学界新聞

連載

2014.11.17



ユマニチュード通信

[その5]通訳を動画投稿サイトで探してみたら

認知症ケアの新しい技法として注目を集める「ユマニチュード」。フランス発の同メソッドを日本に導入した経緯や想い,普及に向けての時々刻々をつづります。

本田 美和子(国立病院機構東京医療センター総合内科)


前回よりつづく

 2013年の夏に初めてのユマニチュード研修会が,東京医療センターで病院看護部の支援を受け開催されることになりました。ジネスト先生が日本の看護師さんに直接指導する初めての試みです。ここでの問題は講義で用いる言語でした。ジネスト先生の講義はフランス語で行われるため,その通訳が必要だったのですが,私たちはどなたにお願いすればよいかわからず,まずはフランス大使館に問い合わせてみました。ところが大使館からは「個別の紹介はしていません」と回答があり,さて,どうしたものか,と途方に暮れました。

 そんなとき,たまたま見ていた動画投稿サイトのYouTubeで試しに「フランス 通訳」と検索してみました。出てきた動画の中に,フランスの舞踊雑誌の編集長が日本大学芸術学部で学生に行った講義がありました。フランス語で行われ,通訳が日本語で伝える形式で進められていたこの講義は大変面白かったのですが,私はとりわけその通訳の方の言葉の使い方に感銘を受けました。それまでの経験から,ユマニチュードを学ぶ際の言語情報の重要性については理解していましたが,それを十分に伝えるためには通訳の能力が大切になってきます。ぜひこの方に研修での通訳をお願いしたい,と思い,もう一度動画を見直して高野勢子さんというお名前を確認し,連絡を取りました。

 高野さんにこれまでの経緯をお伝えし,力を借りたいとお願いしたところご快諾を得ることができました。2012年の夏から現在まで,ジネスト先生・マレスコッティ先生の通訳を高野さんはずっと引き受けてくださっています。2013年からは藤田美香さんというもう一人の通訳にもご参加いただき,講義だけでなく,ベッドサイドでのケアの実技に関してもこのお二人の力を借りながら進めています。

 

 通訳も決まり,いよいよ日本で初めてのユマニチュード研修が始まりました。高齢者のケア,とりわけ認知症のケアに関心を寄せていた看護師さん7人が集まりました。初日はまず,自己紹介と自分が現在困っていることについてそれぞれが語ることから始まりました。経験豊富な看護師さんのお話は大変参考となるものでした。ジネス...

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