医学界新聞

2014.09.15



Medical Library 書評・新刊案内


服部リハビリテーション技術全書 第3版

蜂須賀 研二 編
大丸 幸,大峯 三郎,佐伯 覚,橋元 隆,松嶋 康之 編集協力

《評 者》吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院副院長)

引き継がれるリハビリテーション医療の開拓精神

 『リハビリテーション技術全書』初版が発刊されたのは1974年。私が理学療法士になった年でした。当時,九州リハビリテーション大学校は九州労災病院に併設されていたため,同病院のリハビリテーション科で見る光景がリハビリテーション医療そのものであるという認識がありました。その光景が一冊の分厚い本になったという印象をもって,『リハビリテーション技術全書』を買い求めたのを覚えています。私が九州リハビリテーション大学校に入学したころには,服部一郎先生は同病院からは退任され長尾病院を開設されていましたが,九州においてリハビリテーションの世界を切り開かれたその熱い存在は学生の間でも知れ渡っていました。故に,『リハビリテーション技術全書』は私にとって「聖書」というイメージがありました。1984年には,随所に改訂がされた第2版が出版されました。

 1987年には第22回日本理学療法士学会が神戸で開催され,「日本における理学療法の独創性」を主題に服部先生にご講演いただきました。情報のない戦後間もない時代から取り組んでこられたわが国のリハビリテーション医療の開拓では,服部先生自らの提案が荒野を拓く原動力になっていたのだと,そのときあらためて強く感じたものです。

 第2版が出版された後10年経過しても改訂の様子はうかがえず,これでこの技術全書は途絶えるのだろうかと思っていたのですが,実は不死鳥でした。北九州市にある産業医科大医学部教授として多くのメッセージを社会に発していただいた,蜂須賀研二先生の想像に絶するご尽力によって見事によみがえったのです。編集執筆作業に携わっていない私が「想像に絶するご尽力」というのもおかしな話ではありますが,その構成をご覧いただければ納得できます。第2版が発刊されて30年も経ちましたから,その内容は抜本的に改訂せざるを得なかったのです。リハビリテーションの中身も,そしてそれを取り巻く環境も大きく変遷しています。現在への変化を余すところなく含むことが第3版には求められました。それに十分応えた構成,内容になっています。内容は手にとってご覧いただきたいと思います。

 しかし,細かく図に目を向けると,初版,第2版に用いられたものが数多く採用されています。服部一郎先生を中心に想いを込めてお創りになったリハビリテーションの世界を,そして『リハビリテーション技術全書』を次代にしっかり引き継ごうとされた蜂須賀先生をはじめとする関係諸氏の心が,この『服部リハビリテーション技術全書 第3版』にはみられます。また蜂須賀先生が引き継ぐだけにとどまらず,精力的に更新していくことこそ開拓者たる服部一郎先生の意に沿う編集であるという,強い意志をもって取り組まれたお仕事であると感動しました。

B5・頁1024 定価:本体18,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01757-2


Dr.宮城×Dr.藤田
ジェネラリストのための呼吸器診療勘どころ

宮城 征四郎,藤田 次郎 著

《評 者》松村 理司(医療法人社団洛和会総長)

初学者にもわかりやすい呼吸器臨床の面白さがあふれた一冊

 総合診療誌『JIM』の「臨床の勘と画像診断力を鍛える コレクション呼吸器疾患」シリーズは,すでに第40回に迫っている。この中から日常でよく経験する15症例を選び,呼吸器疾患へのアプローチの仕方を一般内科医や研修医向きにまとめたのが本書である。このシリーズの基になっている沖縄県臨床呼吸器同好会が40有余年間で280回以上開かれているのは,誠に慶賀に堪えない。卒後9年目の私が沖縄県立中部病院勤務の若き日の宮城征四郎先生の門を叩き,(1)H&P(history takingとphysical examination;病歴聴取と身体診察)を重視した診断推論,(2)文献(エビデンス)による裏付けの訓練,(3)チーム医療下での屋根瓦式教育の実際に感銘を受けたのは1983年だが,歴史のひとこまかと感慨深い。

 本書の長所は数多い。第1には,中身の濃い,質の高い症例検討会の臨場感に浸れることである。記録に残そうとする藤田次郎先生の発想と持続力のたまものである。第2に,宮城御大の出番と肉声が十分に確保されている。文字通りの「診療の勘どころ!」から教わるものは多い。H&Pやバイタルサインの活用をめぐる宮城節には従来名人芸がつきまとったが,それをきっちりと味読できるのはありがたい。第3に,重鎮の方々の「画像診断のポイント」や「コメント」にもまばゆい「クリニカル・パール」が散りばめられている。第4に,藤田先生の「文献考察!」が貴重である。ほぼ毎月の努力には頭が下がる。第5に,何よりも,呼吸器臨床の面白さ,楽しさがあふれている。徹底して実際的で,衒学的でない。口語体なのもうれしい。EBM用語も少なく,初学者にも極めて入りやすい。

 新医師臨床研修制度開始10年後の今日でも,診断推論の訓練の「四ない現象」が散見される日本は,不幸である。患者の生の言葉を医学情報に直す「医学的置換(まとめ)」の訓練が足りない。「知識引き出し」による病名推定の訓練は,もっと足りない。そもそも,普段からの「引き出しの蓄積・整理」がなされていない。診断仮説検証の訓練も十分ではない

 診断にまつわる「直感」ほど大切なものは少ない。しかし,生きた教師はなかなか現場にいない。本書にみられる呼吸器診療の名医たちの息吹や謦咳(けいがい)が,実地臨床の羅針盤であり続けてほしいゆえんである。

B5・頁192 定価:本体3,800円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01979-8


症状・経過観察に役立つ
脳卒中の画像のみかた

市川 博雄 著

《評 者》原 元彦(埼玉県立大教授・リハビリテーション医学・神経内科学)

眺めて楽しく,知識が自然と身につく一冊

 この本を手に取って,帯をみて驚いた。「病巣がわかるだけじゃない!」と書かれている。脳卒中の画像診断の入門書として画像の病巣を示すだけでなく,症状と徴候を画像と対比して,これだけコンパクトにまとめるのは大変なことだと思う。写真はきれいでカラー刷りの色もおしゃれで読みやすい。解説は簡潔だが的確で,臨床上の問題点やUp to dateな内容が含まれており,画像は経時的な経過がわかるように記載されている。病巣,症状・徴候から脳卒中の疾患概念まで理解できる見事な本である。

 第I章「押さえておきたい7つの画像」では,基底核,放線冠,半卵円中心,頭頂,中脳,橋,延髄の7つのレベルを選び,特に注目してみるべき画像として指定し...

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