医学界新聞

連載

2014.08.11



在宅医療モノ語り

第52話
語り手:つながりキープのお約束 
外来予約票さん

鶴岡優子
(つるかめ診療所)


前回からつづく

 在宅医療の現場にはいろいろな物語りが交錯している。患者を主人公に,同居家族や親戚,医療・介護スタッフ,近隣住民などが脇役となり,ザイタクは劇場になる。筆者もザイタク劇場の脇役のひとりだ。往診鞄の中,往診車の中,患者さんの家の中,部屋の中……在宅医療にかかわる道具(モノ)を見つめていると,道具も何かを語っているようだ。

 今回の主役は「外来予約票」さん。さあ,何と語っているのだろうか?


予約票は必要ありません
午後2時。辺りは急に暗くなり,雷様と一緒に激しい雨がやってきました。予報でわからないことは,人生にもあるものですよね。こちらは予約票が必要ありません。「24時間対応」は在宅療養支援診療所と同じです。
 朝眠そうな子どもたちが学校や公園に集まってラジオ体操。夏休みによく見かける光景です。学校や仕事がない休みの日をどう過ごすのか,自由度が高く充実度には差が出ます。1日中クーラーをつけて,テレビやゲームにかじりつきでは困ります。「キョウイク」が大事と聞きました。「教育」も大事ですが,「今日行く」ところがあることが大事なんだそうです。ラジオ体操に出かける子どもたちを眺め,なんだか納得です。

 私は,ある患者さんの外来予約票です。予約日はとっくに過ぎています。何度も取り出され,ボロボロになってしまいました。実は私,3か月前に某大学病院の某科専門医に発行されたモノなのです。患者さんはがんという病気で外来通院していました。しかし,私に書いてある予約日,奥さんは困り果て,病院へ電話をしました。「うちの人,なんだか今日伺えそうにありません。歩けないんです」。

 外来...

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