医学界新聞

連載

2014.04.14

在宅医療モノ語り

第48話
語り手:目に見えるつながりです 
診療情報提供書さん

鶴岡優子
(つるかめ診療所)


前回からつづく

 在宅医療の現場にはいろいろな物語りが交錯している。患者を主人公に,同居家族や親戚,医療・介護スタッフ,近隣住民などが脇役となり,ザイタクは劇場になる。筆者もザイタク劇場の脇役のひとりであるが,往診鞄に特別な関心を持ち全国の医療機関を訪ね歩いている。往診鞄の中を覗き道具を見つめていると,道具(モノ)も何かを語っているようだ。今回の主役は「診療情報提供書」さん。さあ,何と語っているのだろうか?


私の封筒までもが情報です
ワタクシ紹介状は封筒に入ってやってきます。前の医療機関の連絡先が書いてある封筒なので,名刺代わりにカルテに保存しておくと便利。入院希望があるのに病院が見つからない,なんてときには紹介元を頼ります。
 前回,「次は椅子に座ってゆっくりとお話しましょう」なんて言って,在宅医は帰っていきましたが,大丈夫かなと心配でした。慌ただしい年度末です。人事異動で主治医交代,一家でのお引越し,それに伴って在宅医療が始まることも終わることもあり,とにかく大忙し。例のお宅で,ベッドサイドの丸椅子に医師が座ることはできても,ゆっくりとお話しできるのだろうかと案じたのです。“暇そうな雰囲気”と“傾聴”がダイジ――頭ではわかっていても,携帯電話が鳴ったり,主治医の焦る気持ちが表に出たりしないかと。

 私は,病院から診療所にやってきた診療情報提供書です。紹介状のほうがなじみ深いでしょうか? 情報の中身はどんなものか? 患者の名前,生年月日,住所,性別,傷病名,紹介目的,病状や治療の経過,処方内容などが書かれています。なぜ紹介されるのかも,きちんと書いてあります。例えば,「発熱の精査」とか「肺炎の加療」とか。次の医療機関で何をしても...

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