医学界新聞

2014.03.17

地域に根付く在宅医療のかたちを探って

第16回日本在宅医学会大会開催


 第16回日本在宅医学会大会が3月1-2日,小野宏志大会長(坂の上ファミリークリニック)のもと,グランドホテル浜松(静岡県浜松市)で開催された。「在宅医療――日本の未来への道標」をテーマに掲げた今回は,全国から約3000人にも及ぶ多職種が集まった。本紙では認知症ケアにおいて在宅医療が果たす役割を模索したシンポジウムと,地域緩和ケアの現状と課題を議論したシンポジウムのもようを報告する。


認知症患者を地域で支える

小野宏志大会長
 急速に高齢化が進み,認知症患者の増加が見込まれる今,認知症ケア体制の整備は喫緊の課題となっている。2013年度に開始された「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」では,「できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会」の構築が目標に掲げられており,地域で患者を支える在宅医療従事者が果たすべき役割は大きいと言える。シンポジウム「これからの認知症ケアと在宅医療」(座長=梶原診療所・平原佐斗司氏)では,各地域の先行例が紹介され,在宅医療が果たす役割を模索した。

 初めに遠藤英俊氏(国立長寿医療研究センター)が,オレンジプランの全体像について,現在の進捗状況を交えて解説した。引き続いて,オレンジプランの目玉ともなる「認知症初期集中支援チーム」(以下,初期チーム)のモデル事業に携わる遠矢純一郎氏(桜新町アーバンクリニック)が登壇した。初期チームは,市町村から委託を受けた地域包括支援センター,診療所,訪問看護ステーションを拠点に,認知症ケアの専門的な知識を有する看護師,作業療法士,精神保健福祉士等の職種で構成。症状が軽度な初期段階で患者宅へと訪問し,認知症の状態や生活状況,介護負担のアセスメント,アクションプランを策定・実施し,患者・家族・ケアスタッフへの支援を担う。

 遠藤氏は「専門家チームによるアセスメントが,地域で暮らす認知症患者を支える上で有効」とこの取り組みを評価。一方で,すでに症状が重篤化した困難事例へのアプローチや,地域住民に対する啓発と心理教育の必要性等を課題として挙げた。

 東京都北区健康福祉部の小宮山恵美氏は,2012年度より同区主導で取り組む「高齢者あんしんセンターサポート医」事業を紹介した。本事業は同区医療圏を3圏域に分け,在宅診療を行う「認知症サポート医」を1人ずつ配置。認知症と疑われる事例があった場合に,サポート医へ協力を要請し,センター職員とともに医療相談・訪問相談等の医療サポートに取り組むもの。小宮山氏はこの取り組みにより,診断と療養環境の整備が早急に進んだ事例を紹介し,在宅医と地域包括支援センターとが一体となって行うアウトリーチが,地域の認知症患者を医療,介護・福祉サービスへと迅速につなげる上で有効であることを示した。

 認知症ケアに街ぐるみで取り組む,福岡県大牟田市の実践を報告したのは大谷るみ子氏(グループホームふぁみりえ)。認知症の高齢者が行方不明になったという想定で,住民が「徘徊役」の捜索を行う「徘徊模擬訓練」,地域の小中学生に絵本を用いて認知症教育を行う「絵本教室」の実施等,行政や医...

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