MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2013.12.23
Medical Library 書評・新刊案内
ジョン D. キャロル,ジョン G. ウェブ 編
ストラクチャークラブ・ジャパン 監訳
《評 者》光藤 和明(倉敷中央病院副院長/心臓病センター長)
SHDインターベンションのコンテンポラリーテキスト
SHDstructural heart diseaseとは栄養血管である冠動脈や電気的活動や心筋の動きではなく,心臓の機械的な構造的異常が病態の原因となっている疾患を一括包含して称するようである。先天性心疾患から,弁膜症,心筋症など多くの疾患が含まれるが,かつては治療のためには外科的手術が必要であった領域である。
SHDインターベンションは,カテーテルによるSHD治療のことを意味し,手術をしなくても治療ができるようにしたことで大きなインパクトを与えた。イノウエバルーンによる僧帽弁裂開術PTMCがその先駆けといえる。複数の病態での構造的インターベンション治療が可能になったために,SHDという言葉が脚光を浴びることになった。その後,さまざまな分野でデバイスや技術が開発され発展して一冊の教科書を形づくるほどになったことは感慨深い。
このテキストは,手技とそれを裏打ちする解剖生理学に関しての広範囲の現在的なかつ極めて有用な唯一のテキストといえる。記述は極めて丁寧で実際的であり,治療にあたる医師から技師,看護師などのスタッフは必読ともいえる内容である。さらに訳文は正確平易で,写真や図版も美しくわかりやすいので,研修医や専門外の医療スタッフあるいは実地医家がSHDインターベンションの概念を大まかに認識するのにも有用であろう。
ただ原著にはない「コンプリートテキスト」と呼ぶにはSHDインターベンションそのものがいまだ発展途上で,病態の守備範囲,治療概念,手技技術などに流動的な部分も多々あり,若干の無理がある。コンプリートとするためにはSHDインターベンションの標準化への努力とそのプロセスを含んだ,第2版,第3版の出版されることを将来に期待するところが大であろう。
また,SHDインターベンションは医師も内科系インターベンション医,心臓血管外科医,心エコー専門医,麻酔科医など各分野の専門家,手術室およびカテラボ看護師,放射線技師,臨床検査技師,臨床工学技士など多くの職種によるチームが一体となって治療にあたらなければならない。こうした幅広い人たちが同じ知識と理解を共有することは必須であるが,必ずしも容易なことではない。
日本では2013年10月1日よりTAVIの保険償還が承認され,今まさに新しいSHDインターベンションが始まろうとしている。このタイミングに合わせたように本書の日本語訳が出版されたことはSHDインターベンションに携わるチーム全体における,知識と理解の共有のために果たす役割は多大でありその意義は極めて深い。
最後に,訳者が現在および将来の日本のインターベンションを担う若い世代の医師たちであることも大変意義深いものがあると考えられる。
B5・頁448 定価14,700円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01789-3


濱田 篤郎 編
《評 者》尾内 一信(川崎医大教授・小児科学)
渡航者医療を簡潔に網羅したバイブル的書物。ぜひ手元に置いて診療を
本書を手に取ってまず感じたことは,「日本で長く要望されていた渡航者医療を簡潔に網羅したバイブル的書物がやっと世に出た」ということである。本書は,実に素晴らしい出来栄えであるが,編集されたのが濱田篤郎博士なので納得できた。濱田篤郎博士は,現在日本渡航医学会の理事長として日本の渡航医学会でリーダーシップを発揮されている。また,労働者健康福祉機構海外勤務健康管理センターJOHACで長く渡航者健康管理に精通され,現在は東医大病院渡航者医療センター教授として教育者としても活躍されている。また,特筆すべきは,渡航医学の専門家でありながら著名な作家であるということである。
主な著作には,『旅と病の三千年史』文藝春秋,『伝説の海外旅行――「旅の診断書」が語る病の真相』田畑書店,『歴史を変えた「旅」と「病」――20世紀を動かした偉人たちの意外な真実』『世界一「病気に狙われている日本人」――感染大国日本へのカウントダウン』以上,講談社,『新疫病流行記――パンデミック時代の本質』バジリコなどがあり,いずれも思わず濱田ワールドに引き込まれる良書である。知らないうちに渡航医学の面白さが身近なものとなるので,これらの本もぜひお薦めしたい。
さて,本書は渡航地が途上国ばかりでなく先進国である場合も網羅し,短期滞在から長期在住まで,出国前ばかりでなく帰国後の対応までも初心者でもわかりやすく,しかも最新情報に基づいて解説されている。さらに海外で罹患が予想される疾患別,健常者ばかりでなくさまざまな慢性疾患,小児など渡航者別,渡航地域別にそれぞれ異なる視点でわかりやすくまとめられている。渡航者医療に関する情報は,慣れてくるとインターネットでも断片的に収集可能であるが,慣れないとなかなか必要な情報にたどり着けない。本書には,渡航者医療に必要不可欠な情報が整然とちりばめられている。渡航医学の専門家ばかりでなく,渡航者医療をこれから学ぼうと考えている先生にも役立つ有用な情報源に仕上がっている。特に普段渡航者の医療に慣れない先生は,ぜひとも手元において診療されることをお薦めしたい。
国際情勢は日々変化しており,これに伴って渡航者への対応も変化する。本書は出版されたばかりであるが,定期的に改訂されることを期待する。
A5・頁368 定価5,040円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01876-0


NPO法人 日本医療ソーシャルワーク研究会 編
村上 須賀子,佐々木 哲二郎,奥村 晴彦 編集代表
《評 者》宇都宮 宏子(在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)
さまざまな患者・家族のケースマネジメントへの実践書
私は,病院から生活の場へ患者さんを帰したいと考え,訪問看護の現場から大学病院に移り,「退院調整看護師」として,退院支援・退院調整に取り組んだ。私が訪問看護をしていた時代は介護保険制度が施行される前で,行政の高齢福祉課のケースワーカーや,ヘルパー事業所,特別養護老人ホームのデイサービスや短期入所担当の相談員たち,多くの社会福祉士の仲間に支えられ,対象者や,家族の抱える暮らし,経済問題,虐待の問題等に一緒にかかわってきた。
1992年から,私が訪問看護を実践していた京都の行政区では,特に「福祉・医療・保健の実務者会議」を当初から開催し,困難事例のケース検討も行ってきた。そこで中心になって会を牽引していたのが行政の社会福祉士だった。その経験から,退院調整部門では医療ソーシャルワーカーMSWと退院調整看護師が協働して取り組むことが効果的であると考え,病院に戻ってからも退院調整部門の仕組みを作ってきた。
効果的な退院調整の鍵となる職種だが,多くの医療機関は,MSWが1人あるいは2人くらいで対応していることが多く,ロールモデルの少ない環境で,働きながら知識を深め,相談支援の経験をこなし,業務マネジメントをすることも求められている。大学卒業後,病院に就職した時点で,病院の中の唯一の福祉職として,MSWに期待されることが多い中,孤軍奮闘している。ただ,私が全国の医療機関でアドバイザーとして活動したり,研修を行ったりする中で,「介護保険のケアマネジャーはいるが,ケースマネジメントができる人がいない」と感じることは多い。病気や障害と遭遇するのは,医療機関である。患者のみならず,家族や支える人たちも含め,生涯にわたり,ケースマネジメントができるMSWに成長していただきたい。そのためにも,図や表による説明が多く,理解しやすくまとめられた本書をMSW1年目の教科書として活用してほしい。
I章「社会保障のしくみ」では大枠を理解でき,各種サービスの窓口も紹介されている。II章以降は,「医療サービス」「生活費としごと」「高齢者サービス」「障害児・者サービス」「難病」「母子ひとり親・乳幼児・児童のために」「権利の擁護」と分野を分け,東日本大震災後からは,「自然災害等にあわれた人のために」という章も加え,制度の説明,情報,利用方法がまとめられている。表紙の見返し部分の「ライフステージからみた社会保障」では,誕生から高齢者までのライフステージに沿って利用できる制度がわかりやすく紹介されている。
MSWがいない医療機関で退院調整にかかわる看護師にも,制度や窓口等の理解,参考になる項目が多い書籍である。
A4・頁308 定価3,465円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01770-1


堀 進悟 監修
田島 康介 執筆
《評 者》新藤 正輝(帝京大病院教授・外傷センター長)
当直やER診療を行う医
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