米連邦政府機関閉鎖とオバマケア(李啓充)
連載
2013.10.28
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第256回
米連邦政府機関閉鎖とオバマケア
李 啓充 医師/作家(在ボストン)(3047号よりつづく)
米連邦政府の会計年度は10月1日から始まる決まりとなっている。しかし,今年の場合,9月30日中に予算が成立しなかったため,「必須でない」政府機関が閉鎖されることとなった。
当然のことながら,政府機関閉鎖の影響は医療関連部門にも及んだ。復員軍人病院など,直接患者のケアに携わる部門は閉鎖されなかったものの,保健省職員の約半数が自宅待機となっただけでなく,研究関連部門もほとんどが閉鎖され,NIH関連研究予算は新規給付が停止された。研究者のほとんどが,いつ予算が成立するかの見通しが立たないまま「(すでに給付済みの)手持ち資金」のみで研究を継続しなければならなくなったのである。
政府機関閉鎖は,「行政業務が行われない」という直接の「不便」にとどまらず,政府職員への給与未払いや政府関連経済活動の停止などを通じて,経済全般に甚大な悪影響を与えることは論をまたない。
通常ならば,「予算不成立」は,政治家として絶対に避けなければならない「最悪の事態」なのであるが,なぜ今回この最悪の事態が起こってしまったのかというと,その原因は,民主・共和両党のオバマケアをめぐる根深い対立にあった。
予算を人質にとった骨抜きと全面施行遅延戦術
オバマケアは,国民の6人に1人が無保険という悲惨な状況を打破するために,オバマ大統領が主導して進めてきた医療制度改革であり,その根幹を成すのは,2010年3月に成立したAffordable Care Act (ACA)である。これまで,保険会社に対する「既往疾患の存在を理由とした保険加入を拒否してはならない」,あるいは「加入者から徴収した保険料の8割以上を実際の医療に使わなければならない」等の条項が...
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