医学界新聞

寄稿

2013.04.22

【寄稿】

新たな助産師を育成する「助産師派遣事業」
広島県における県行政と看護協会の取り組み

板谷 美智子(広島県看護協会 会長)


助産師が足りない

 産科医の不足により分娩取り扱い医療機関の減少が続き,院内助産業務を担う助産師の有効活用が求められている一方,就業場所の偏在から診療所等の施設では助産師不足の現状が問題となっています。広島県では,2008年度の助産師就業者数が10万人当たり17.5人(2008年度厚労省衛生行政報告例)と全国43位に位置したことをきっかけに,助産師確保対策が喫緊の課題となりました。

 2009年度には助産師緊急確保対策事業として,(1)助産師修学資金貸付,(2)助産師養成施設派遣支援(助産師資格取得のため養成施設に看護師を派遣する際の補助)が事業化され, 3年間で55人の助産師が県内施設に就業。一定の効果がみられました。しかし,県内分娩取り扱い件数の約6割を担う有床診療所や中山間地域への就業がほとんどなく,就業場所の偏在是正も含めたさらなる助産師確保対策が必要となっていました。また,県内5つの助産師養成課程を持つ看護系大学のうち3大学では,2009年度以降,助産学専攻科の開設によって養成定員を30人増やし, 5大学の一学年当たりの養成定員を55人としましたが,増加した学生の実習を受け入れる施設の確保困難という新たな課題に直面していました。これらの課題を解決するために,広島県で2012年度よりスタートした新たな事業が「助産師派遣事業」です。

実習の段階から県内就業への道筋を立てる

 2010年,広島県看護協会の助産師職能委員会から,助産業務に従事している大規模病院助産師の疲弊感が強く,離職者も増加していることが報告されました。ハイリスク分娩の多い医療現場で助産師学生の実習指導は負担が重く,一方で,後輩の育成は大切であるとの思いも強く,その狭間で揺れ動く助産師の厳しい職場環境が明らかになったのです。

 当時,他の都道府県では有床診療所での助産学実習が行われていましたが,広島県ではほとんど実施されていませんでした。また,2010年度に広島県内の大学を卒業した助産師の4割強が,県外の施設に就職している実態が指摘されました。この原因の一つに,県内で助産学実習を行える施設が少なかったことから県外で実習が行われ,そのまま県外就業へとつながっている現状が挙げられました。

 これらの実態から,助産現場の負担軽減と県内の助産学実習施設の確保を実現するためには,有床診療所での助産学実習体

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