図表にはルールがあった!(新美三由紀)
連載
2013.02.25
なかなか教えてもらえない
看護研究発表の「キホン」と「コツ」!
【第5回】
図表にはルールがあった!
統計学が得意でないナースのための図表作成ノウハウ
新美 三由紀(佐久総合病院看護部)
(3012号よりつづく)
この連載では,みなさんに「研究発表してみたいな」とか「もっと研究発表してもいいかな」と少しでも思ってもらえるように,研究発表のキホンとコツをギュッと凝縮してすぐに使えるノウハウを解説します。
情熱の統計学者とも呼ばれるフローレンス・ナイチンゲールは,図表を駆使して「劣悪な生活環境は衛生状態を悪化させ死亡率を高める」ことを国家に訴えました。図表は,データや結果を効果的に効率的に伝えるためのツールです。「作り方」「使い方」を覚えれば,研究発表の強力な武器になることは間違いありません。
そこで今回は,スライド・ポスターに載せる図表の基本を解説したいと思います。図表は統計の基礎ですが,数式は出てきません。また,質的データを取り扱う研究でも図表は用いられ,基本は同じですから質的研究を主としている人もぜひご一読ください。
「表」と「図」の特徴と使い分け
図表は,データや結果を視覚的に表現する方法として研究報告で多用されます。文章よりも多くの情報を直感的に伝えられるという特徴を持つ一方,ルールに従って正しく作成しなければ誤った情報を与える危険性もあります。
データや結果を文字・数字の配列で表現する「表」は,図よりも情報を見つけやすく,研究で得られた生データや要約データをより正確なかたちで示すことができます。患者背景データと結果データをそのまま表に列記すれば,結果のばらつきや外れ値(その集団の分布から極端に外れたデータ)を示した患者背景がわかります。
聴衆はデータを見ることで,研究者の解釈の偏りを知ることができます。小規模研究や質的研究では,データをそのまま表に入れることは結論の妥当性を示すのに有効ですし,大量のデータを扱う研究では,複雑な構造を持つデータを集約して表示するのにも有益です。
これに対し,「図」は複数のデータを比較したり,全体的な傾向を知るのに適しています。また,質的研究では抽出された要素における多次元の関係性を表現することができます。
臨床試験の報告書作成のテキストでは,「比較を目的とする場合,表より図で示すこと」が推奨されています。読者のペースで読む論文と違い,学会発表では,情報を短時間に明確に伝えることが特に重要ですから,表より図を選択する可能性は高くなります。
表を構成する6つの要素
表は基本的に以下の6つ(質的研究では,1)-5)の5つ)の要素から成り立ちます(表参照)。
1)表番号(「表○」):スライドでは不要。ポスターや論文で複数の表を示すときは,表番号と表タイトルは文中と統一し,表の上部に付ける。
2)表タイトル:表の内容を,短い言葉で表現する。
3)列見出し:表の縦が示すもの。データが値の場合,合計(n=○)と単位を入れる。
4)行見出し:表の横が示すもの。行で単位が異なる場合,単位は行見出しに入れる。
5)データ:各セルには,データまたは要約統計量(中央値や平均値等,そのグループを代表的に表現する値)を入れる。
6)横線:正式な論文では縦線を使わず横線のみ。スライドでは,見やすさのために縦線を入れることもある。
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