医学界新聞

連載

2012.10.08

「型」が身につくカルテの書き方

【第4講】 カルテ記載の基本の型 SOAP(3)

佐藤 健太(北海道勤医協札幌病院内科)


2993号よりつづく

 「型ができていない者が芝居をすると型なしになる。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」(by立川談志)。

 本連載では,カルテ記載の「基本の型」と,シチュエーション別の「応用の型」を解説します。


急性疾患初診時のカルテ記載例

(S・Oは省略)
【初期評価(=Assessment)】

#1.ACS

 多重する心血管リスクを認める患者の,冷感と嘔気を伴い30分以上持続する胸部絞扼感。心電図異常と心筋逸脱酵素上昇を伴いACSの基準に合致する。鑑別診断は心膜心筋炎,たこつぼ型心筋症,心筋以外からの酵素逸脱が挙げられるが,○○の理由で可能性は低いと見積もっている。いずれにしてもACSの検査治療目的で心カテーテル検査は行うため,このときの評価と心エコーで鑑別を進める。(1)

【初期プラン(=Plan)】

 Tx)(2)ニトログリセリン○mg+5%ブドウ糖50 mL→4 mL/時で持続静注開始。

 バイアスピリン,プラビックスを……,酸素を……。

 Dx)(3)心カテ室が準備できるまでの間にベッドサイドで心エコー検査実施。

 30分以内にカテ室でCAG開始。看護師から各スタッフに連絡を取る。

 ECG・SpO2持続モニタリングと,血圧・意識も5分ごとに再評価。

 Ex)(4)本人と妻に,○○時の時点で,ベッドサイドにて,CAG用説明用紙を用いて病態と治療方針説明。

   病状が安定したら禁煙教育と食事運動療法の処方を行う。

 Px)(5)退院前に,二次予防としてACE-I・βblocker・スタチン・アスピリンが入っていることを確認する(パス参照)。

 肺炎球菌ワクチン・インフルエンザワクチンの提案。

 病態が落ち着けば○か月後に外来でがん検診も勧める。

 Wx)(6)診断確定次第,退院後も継続できる心リハの手配。

 入院費支払い困難と予想,各種サービス手配をMSWに相談。


(1)これはアセスメントに含まれる「方針」。「ひとまずカテをやってから考える」という大枠をつかめる。
(2)治療プラン。具体的な商品名や用量・用法も明確に記載。
(3)診断プラン。診断のための検査以外に,経過観察プランや検査のための手配・手順も記載
(4)説明プラン。Informed consent内容だけでなく,食事運動療法などの動機付けも重要。
(5)予防プラン。病名や年齢性別ごとにやることはほぼ決まるので,時間的余裕と知識さえあれば初診時・入院時でも書けるようになる。訓練次第。
(6)福祉プラン。いずれも調整・申請に時間がかかるので,「早期」に,急性期病棟であれば初日から動き出すべき。忘れずに記載し,指示する。


 これまでに基本情報となるSとO,病状を詳細に分析するAについて説明しました。今回はこれらを踏まえて,具体的な介入を記載する「P:Plan」について解説します。どんなに素晴らしい診断推論ができていたとしても,実際に患者に適応する段階がお粗末では十分に効果が発揮されません。アセスメントの成果をそのまま反映できるプランの書き方を身につけましょう。

■「方針」と「計画」の違い

 プランとは「計画」のことであ

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