医学界新聞

連載

2012.09.10

「型」が身につくカルテの書き方

【第3講】 カルテ記載の基本の型 SOAP(2)

佐藤 健太(北海道勤医協札幌病院内科)


2989号よりつづく

 「型ができていない者が芝居をすると型なしになる。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」(by立川談志)。

 本連載では,カルテ記載の「基本の型」と,シチュエーション別の「応用の型」を解説します。


文章形式でのカルテ記載例

問題リスト(1)

#1.ACS,#2.ショック,#3.糖尿病

【初期評価】

#1.ACS(2)

多重する心血管リスクを認める患者の,冷感と嘔気を伴い30分以上持続する胸部絞扼感。心電図異常と心筋逸脱酵素上昇を伴い急性冠症候群(ACS)の基準に合致する。(3)

鑑別診断としては心膜心筋炎,たこつぼ型心筋症,心筋以外からの酵素逸脱が挙げられるが,諸検査の結果からその可能性は低いと見積もっている。(4)

ACSの評価目的で心臓カテーテル検査は速やかに行うので,この結果をみて診断を確定し,ACSであれば引き続き治療を行う。(5)

ただし,心機能のわりには重症感・バイタル異常が強いため,#2についても同時並行で精査を進める。(6)


(1)問題リスト:複数のプロブレムがある場合は,最初にまとめて記載する欄を用意する。
(2)プロブレム名
(3)Brief summary:プロブレム名を付けた根拠となるS・Oの情報を踏まえつつ,このプロブレムの全体像を簡潔にまとめる。
(4)鑑別診断と根拠:今回は,最も疑っている診断(ACS)はBrief summaryで説明しているため,除外すべき鑑別診断についてのみ述べている。
(5)方針:今後どうなるかの見通しを共有できるように簡潔に書く。超急性期の場合は長期方針までは書けないことも多い。
(6)特記事項:ここまでの項目やこのプロブレム内で説明しきれず他プロブレムに影響することなどを補足する。


 前回のS・Oの解説に引き続き,今回は内科医によるカルテ記載のキモとも言える「A;Assessment」についてじっくり説明していきます。

アセスメントの「基本の型」

 アセスメントに書くべき必要十分な情報とはどんなものでしょうか? ほかの人が読みやすく,自分の頭も整理される書き方はどうすれば身につくのでしょうか? S・O以上に曖昧で,医師によって書き方の違いが大きいのがこのA欄だと感じています。

 私が普段実践しているカルテ記載法は,「総合プロブレム方式」(参考文献:栗本秀彦著『総合プロブレム方式』プリメド社)を基本に,内科認定医試験のレポート記載要項なども参考にしています。患者の状態がほかの医師やコメディカルにも理解しやすく,かつ研修医自身の診断推論能力向上にも役立つよう工夫して作った「型」です。現在はこのフォーマットを基本に,初期研修医にカルテやサマリー記載を指導していますが,すぐに理解し上達していきますので,みなさんもぜひ実践してみてください。

 アセスメン

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