「村上ラヂオ」の涼風(井部俊子)
連載
2012.09.24
看護のアジェンダ | |
看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加看護大学学長 |
(前回よりつづく)
突然ですが,「村上ラヂオ」って,知っていますか。この夏,村上電気が発売したエコ・ラジオです。というのは嘘です。「村上ラヂオ」は村上春樹が書いているエッセイ集です。読書好きでちょっと疲れている方にお薦めです。文体といい,大橋歩の画といい,ほんのりしていて心に涼風が通り過ぎます。
村上春樹は,雑誌「anan」に「村上ラヂオ」という連載エッセイを書いていました(私は,昔「anan」のファンでしたが,現在は「ミセス」とか「STORY」といった雑誌を美容院で手に取るような年代なので,彼の連載を雑誌では読んでいません)。一年間,雑誌に掲載されたもの(約50編)が,本になり,このたび3冊目の「村上ラヂオ」が出版されたというわけです。
サラダ好きのライオン
「anan」の読者層の大半は若い女性だし,村上春樹自身は「かなり高いレベルのおっさん」だから共通する話題なんてほとんど存在しないはずなので,腹をくくって気楽に好きなことを書いてきて,ある時点で気付いたというのです。「相手が何を思うかなんてとくに考えずに,自分の書きたいことを,自分が面白いと感じることを,好きなように楽しくすらすら書いていれば,それでいいじゃないか」と「まえがき」に書いています(「看護のアジェンダ」の筆者の心境にぴったりです)。彼が二十歳のころは,「anan」とか「平凡パンチ」が家に積んであり,「自分がいつかいっぱしのおっさんになるなんて思いも寄りませんでした」という感覚は私も全く同感です(「いっぱしのおばさん」というかどうかは別として)。
というわけで,シリーズ3冊目は,『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』(マガジンハウス,2012年7月発行)です。「サラダ好きのライオン」って何だ,と思っている方がいるでしょう(私もそうでしたから)。その話は最初のエッセイに出てきます(「忘れられない,覚えられない」)。毎週毎週よく書くことがありますね,と訊かれるが,話の材料に不自由することはまずない。なぜなら連載を始める前に,50個くらいトピックを用意しておくからだというのです。けれども,新しいトピックを思いつくことがあって
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