オバマケア合憲判決の「想定外」(3)(李啓充)
連載
2012.09.17
〔連載〕続 アメリカ医療の光と影 第230回
オバマケア合憲判決の「想定外」(3)
李 啓充 医師/作家(在ボストン)(2992号よりつづく)
前回までのあらすじ:6月28日,米最高裁は,オバマケア違憲訴訟で最大の争点となった「インディビデュアル・マンデート(保険加入義務付け条項)」について,「連邦政府が持つ徴税権の範囲内」として合憲とする裁定を下した。
前回まで2回に渡って「インディビデュアル・マンデート」が合憲とされた経緯を解説したが,この部分に関する裁定の「想定外」は以下の2点にまとめられよう。第一は,「保守派としてオバマケアについては反対の立場を取るはず」と見られていた最高裁長官ジョン・G・ロバーツが合憲判決に与し,「救いの手」を差し伸べたことだった。そして,第二は,合憲とされた論拠が審理の際に争われた「憲法の通商条項」ではなく,「徴税権」に基づいたことだった。
もうひとつの「想定外」
しかし,今回の最高裁判決の「想定外」は「インディビデュアル・マンデート」をめぐる部分にとどまらなかった。オバマケアにおいて無保険者解消策の大きな柱となった低所得者用公的医療保険「メディケイド」の受給者拡大策について,その重要部分が違憲と裁定されたのである。メディケイド拡大策については,下級審ではすべて合憲とされてきた経緯があっただけに「想定外」の裁定となった。
今回の違憲裁定の背景をご理解いただくために,以下,メディケイドの来歴・仕組みについて簡単に説明する。
メディケイドが創設されたのは1965年。高齢者用公的保険「メディケア」が創設された際に,いわば「添え物」として付け足された制度だった。
メディケアを管轄するのが連邦政府であるのに対して,メディ
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