膠原病診療におけるステロイド(高田和生)
連載
2012.04.09
もう膠原病は怖くない!
臨床医が知っておくべき膠原病診療のポイント
◆その11◆
膠原病診療におけるステロイド
高田和生(東京医科歯科大学 医歯学融合教育支援センター 准教授)
(2968号よりつづく)
膠原病は希少疾患ですが,病態はさまざまな臓器におよび,多くの患者で鑑別疾患に挙がります。また,内科でありながらその症候は特殊で,多くは実際の診療を通してでなければとらえにくいものです。本連載では,膠原病を疑ったとき,膠原病患者を診るとき,臨床医が知っておくべきポイントを紹介し,膠原病専門診療施設での実習・研修でしか得られない学習機会を紙面で提供します。
Mayor Clinicの医師,Philip S. Henchにより1948年に初めて関節リウマチの患者にコルチゾン100mg[プレドニゾロン(PSL)換算20mg筋注]が投与されてから60年以上経た今も,糖質コルチコイド(GC)は膠原病治療の根幹として君臨しています。
今回は,膠原病患者にGCを使うとき,あるいはGCを使っている膠原病患者を診るときに,臨床医が知っておくべきポイントをまとめます。
(!)GC治療のポイントは,初期投与量,免疫抑制治療併用の是非,パルス療法の是非,漸減スピード
(1)初期投与量
臓器または全身病態の病勢を抑え,沈静化するのに必要最小限の量が,経験に基づき推定され,用いられます。
(2)免疫抑制治療併用の是非
重要臓器に病変が及び,(1)として高用量GC単独治療(PSL換算0.6-1.0mg/kg)では経験的に不十分,または忍容性が低く必要な用量が投与できない場合には,病勢制御失敗のリスクを回避するため,初期治療開始時より免疫抑制療法を併用します。
(3)パルス療法の是非
死亡または不可逆的臓器障害の危機にある場合には,上記治療に加え,レスキュー目的で即効性のあるパルス療法が用いられます。
(4)漸減スピード
「2-4週間で10%の減量」などの大まかな指針はあるものの,実際には次の要素を考慮して随時調整されます。
・疾患としての特性(高用量GC短期投与のみで沈静化する疾患,緩徐漸減にて地固め療法が必要な疾患,など)
・当該症例における疾患の病勢
・当該症例のGCに対する反応性
・相対的副腎不全状態(後述)の回避
また,初期治療により寛解導入または安定化が達成された後に,その維持に免疫抑制治療が必要な場合には,比較的安全性の高い免疫抑制治療を併用し,蓄積性副作用(骨密度低下など)のあるGCを可能な限り減量します。
(!)細胞質GC受容体はPSL30mg/日以上で飽和する
GCは,細胞質GC受容体と結合し,直接,または転写因子を介して炎症性サイトカインやCOX-2遺伝子を含む,ゲノム全体のおよそ1%の発現を制御(数時間を要する)しています。しかし,細胞質GC受容体は,PSL換算30mg/日以上でほぼ飽和すると言われており,パルス療法では上記の使用に加え,以下に挙げる機序による効果が非常に短時間でもたらされます。
・細胞膜GC受容体への結合を介した機序(アポトーシス誘導など)
・GC受容体を介さない,直接的な細胞膜やミトコンドリア膜への作用
・細胞質GC受容体への結合を介した,遺伝子発現制御以外の機序
(!)合成GC各製剤は,鉱質/糖質コルチコイド作用や水への溶解性の違いなどに基づき,使い分けられる
ステロイドカバー(後述)にヒドロコルチゾンが用いられるのは鉱質コルチコイド作用が強いからです。また,パルス療法にメチルプレドニゾロンが使われるのは,前述したゲノム発現制御以......
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