医学界新聞

連載

2012.03.05

もう膠原病は怖くない!
臨床医が知っておくべき膠原病診療のポイント

◆その10◆
結合組織病/血管炎

高田和生(東京医科歯科大学 医歯学融合教育支援センター 准教授)


2964号よりつづく

 膠原病は希少疾患ですが,病態はさまざまな臓器におよび,多くの患者で鑑別疾患に挙がります。また,内科でありながらその症候は特殊で,多くは実際の診療を通してでなければとらえにくいものです。本連載では,膠原病を疑ったとき,膠原病患者を診るとき,臨床医が知っておくべきポイントを紹介し,膠原病専門診療施設での実習・研修でしか得られない学習機会を紙面で提供します。


 今回は,結合組織病(CTD)および血管炎について,概略的な考え方を学びます。

(!)結合組織病関節リウマチも「結合組織病」

 混合性結合組織病(MCTD)に加え,未分化結合組織病(または分類不能型結合組織病,UCTD)という疾患名を耳にしたことはあるでしょうか。これらに含まれる「結合組織病」とは,広義のCTD[遺伝性の結合組織病態(Marfan症候群など)や壊血病なども含む]のうち,自己免疫性病態による狭義のCTD(自己免疫性CTDや全身性自己免疫疾患とも称される)を指します。CTDは,以下の3つに分けられます()。

 結合組織病の全体像(各疾患名の大きさは有病者数を反映するが,オーバーラップ頻度は正確には反映しない)

(1)既に明確に定義されたCTD[関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス(SLE),シェーグレン症候群,多発性筋炎・皮膚筋炎,全身性強皮症(SSc),MCTDなど]のいずれかの分類基準を満たす症例
(2)複数のCTDの分類基準を満たす症例(オーバーラップ)
(3)CTD患者の多くが共有する特徴をいくつか持つも,いずれのCTDの分類基準を満たすに至らない症例

 先ほどお話ししたUCTDは,(3)に該当します。(1)から(2)へ,また(3)から(1)へ移行する症例もあります。

(?)混合性結合組織病という概念はもう使われていない?

 MCTDは,もともとCTDの一つ,つまり上述の(1)として提唱されました。しかしその後,MCTD症例の多くがSLEやSScへと移行(その根底にあると思われる自己免疫のエピトープ拡大については本連載第2回を参照)していくのを受け,MCTDは(1)ではなく(3)の亜型に過ぎないのではないかという意見も出てきました。しかし,RA,SLE,多発性筋炎・皮膚筋炎,SScのそれぞれの特徴をかいつまむように持ち,血清学的に抗RNP抗体の高力価を呈し,他のCTDに比較して肺高血圧症の合併率が高いMCTDは,(3)の亜型ではなく(1)の一つと考える専門医が多いです。現在,日本におけるMCTD患者数は8000―9000人と推定されています。

(!)UCTDの70%は,「未分化」のまま経過する

 CTDおよびUCTDの統一された分類基準がないためばらつきはありますが,膠原病外来を受診した発症後1年以内のCTD患者の約半数が,その時点で(3)の状態にあります1)。このうちの30%ほどが,その後数年以内に(1)または(2)に移行します。残りの70%は(1)や(2)に移行することなく,同様の症候および血清学的所見(58―90%が抗核抗体陽性,30%が抗SS-A抗体陽性,28%が抗RNP抗体陽性)を呈し,一部は低用量の糖質コルチコイド(GC)の短期間の使用や比較的弱い免疫抑制薬を要しながら経過します1)

■血管炎

 血管炎には,一次性および二次性(RAやSLEによるもの,感染症や薬剤によるものなど)があり,さまざまな臓器に及び多様な症候を呈します。病勢が十分に制御されない場合,重篤な障害が残り,生命予後も不良です。本稿ですべてをカバーすることは不可能ですが,血管炎の「考え方」を共有します。

(!)一つの血管炎では,臓器こそ異なるものの,同じサイズの血管に病変が及ぶ

 血管炎は,罹患血管のサイズにより,大型血管炎(大動脈や幹動脈),中型血管炎(中~小筋型動脈),小型血管炎(細動脈や毛細血管,細静脈)に分類されます()。血管炎の理解は,共通点と各疾患に特徴的な点を整理することで深まります。共通するのは次の点です。

・血管壁に炎症が起きることにより,以下のいずれかまたは両方が起こる。
 壁脆弱化→脈瘤や出血
 壁肥厚→内腔狭窄→虚血...

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