医療安全と医療者のセルフケア(井部俊子)
連載
2011.12.12
| 看護のアジェンダ | |
| 看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加看護大学学長 |
(前回よりつづく)
雨の大阪にて
その日は低気圧が二つも日本列島に近づき大阪の街は激しい雨だった。新大阪駅から乗った小型タクシーのワイパーはリズミカルに動き,フロントガラスにたたきつけられる雨粒を払っていた。タクシーの運転手はしわしわのマスクを口に着けていた。もさもさした白髪は年齢を感じさせた。「ひどい雨になりましたね」と私は声をかけた。運転手は何か言葉を発したが声が小さく聞きとれなかった。けれど気のよさそうな人だと思った。彼の風貌に似合わず,車はかなりスピードを上げて雨の大阪を走った。講演の時間がせまっていた私は,赤信号すれすれで交差点を過ぎる少しアラアラしい運転を許容していた。
新大阪駅から高架道を降りてしばらく行ったところで運転手は車を路肩に止めた。どうしたのかと不審に思っていると,運転手はつぶやくように「ちょっとトイレ」と言って,雨の中に出ていった。辺りはコンクリートの壁が続き人通りは少なかった。「あっそうですか」と私は努めてさりげなく好意的に答えた。彼がどこでどのように排尿したのかあえて追及しなかった。レディとして。
数分で彼は運転席に戻った。そして,また聞き取れない声で「どうも」とか言って車を走らせた。用を足した後の彼の運転は変わった。年齢相応のスピードとなり,信号も守った。彼の年齢不相応な過激な運転は生理現象がそうさせたのだと私は推察した。会場に到着し,傘をさして出迎えてくれた友人とあいさつを交わしたため,尿意と運転スピードとの関連を聞きそびれた。
「自分を点検し,自分を守る」のが危機管理の基本
それから2日後,東京で第6回...
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