医学界新聞

2011.10.31

てんかん診療のスタンダードを求めて

第45回日本てんかん学会開催


亀山茂樹会長
 第45回日本てんかん学会が,10月6-7日,亀山茂樹会長(国立病院機構西新潟中央病院)のもと「診断・治療のゴールド・スタンダードを求めて」をテーマに朱鷺メッセ(新潟市)で開催された。新薬の相次ぐ発売などで診断・治療が進歩を続ける一方,高い有病率に比して専門医数の少なさや診療レベルの地域差など,解決すべき課題も多いてんかん領域。精神科・神経内科・脳神経外科・小児科などてんかんに携わる診療科から多数の医療者が集い,これからのてんかん診療の在り方が議論された。







各診療科がてんかん診療の担い手である認識を持って

シンポジウム「てんかん治療医を増やすために何をなすべきか」のもよう
 シンポジウム「てんかん治療医を増やすために何をなすべきか」(座長=弘前大大学院・兼子直氏,東京医歯大大学院・水澤英洋氏)では,てんかんを診られる医師を広く育成し,診断・治療のボトムアップを図るための方策が議論された。

 精神科医の"てんかん離れ"が進んでいると言われるが,兼子浩祐氏(愛知医大)は,社会経済的な側面を含めた多角的なアプローチや,難治性の患者に寄り添う姿勢,多岐にわたる精神症状の評価など,精神科医がてんかんを診るメリットをあらためて説いた。氏は精神疾患を(1)心因性,(2)うつ病・躁うつ病,(3)その他の内因性精神病,(4)外因性の器質的疾患(てんかんを含む),に分類した階層図を提示。診断が各階層を揺れ動き鑑別に難渋した症例を紹介し,誤診を避けるには,生活全体を見わたす精神科的な視野が要る場合があること,精神科医もてんかんを適切に評価できなければ,包括的な治療戦略を立てられないことなどを指摘した。

 小児科の立場から登壇した山本仁氏(聖マリアンナ医大)は,治療を持ち越したり,担当医の変更を避けたい心理から,成人患者が小児科医を受診し続ける「キャリーオーバー」の問題を指摘。同大でも,小児科のてんかん患者の約30%が20歳以上だという。患者の大半が非専門医による治療で十分発作を抑制できる現状を受け,内科・小児科・脳神経外科・精神科など複数科による定期的な情報交換の場を設けるなど,地域でてんかんを診られる医師を増やす取り組みを紹介した。またそうした医師を学会で認定できる仕組みを作ることが,知識の浸透や充実した診療体制の構築につながると考察した。

 神経内科がてんかん診療の主体となる国が多いなか,日本てんかん学会に占める神経内科医の割合はいまだ16.7%(2011年)にとどまる。辻貞俊氏(産業医大)は,日本神経学会による「てんかん治療ガイドライン2010」の刊行,学会プログラムの工夫などで神経内科医のてんかんへの関心は高まっているとしながらも,脳波判読や医療福祉制度の煩雑さなどから,てんかんを難しいと感じる神経内科医が多いことを明示。日本神経学会と日本てんかん学会,さらに日本臨床神経生理学会とが連携し,神経内科医の"脳波離れ"を食い止め,てんかん診療の裾野を広げていくべきと結論した。

 加藤天美氏(近畿大)は,てんかん診療で脳神経外科医に期待される役割として,成人の一般てんかん患者の薬物治療と,てんかん外科適応の判断・外科治療を挙げた。"てんかんは脳神経外科の守備...

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