糖尿病マーカー(前川真人)
連載
2011.07.11
学ぼう!! 検査の使い分け 【シリーズ監修 高木康(昭和大学教授医学教育推進室)】 | |
○○病だから△△検査か……,とオーダーしたあなた。その検査が最適だという自信はありますか? 同じ疾患でも,個々の症例や病態に応じ行うべき検査は異なります。適切な診断・治療のための適切な検査選択。本連載では,今日から役立つ実践的な検査使い分けの知識をお届けします。 | |
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前川真人(浜松医科大学教授・臨床検査医学) |
(前回からつづく)
糖尿病を診断する上で必要不可欠な検査である「血糖」と「HbA1c」。今回は,糖尿病の診断にこの二つの検査をどのように活用していけばよいか,昨年改定された新しい糖尿病の診断基準に沿って考えていきます。併せて診断時における注意ポイントについてもおさえます。
「血糖」と「HbA1c」は,ともに糖尿病を診断する上で必要不可欠な検査です。昨年改定された日本糖尿病学会(Japan Diabetes Society;JDS)の「糖尿病の診断手順(2010)」から検査に関係するものを抜粋すると,
・早朝空腹時血糖126 mg/dL以上
・75 g糖負荷試験(OGTT)の2時間値200 mg/dL以上
・随時血糖200 mg/dL以上
・HbA1c(JDS値)6.1%以上[HbA1c(国際標準値)6.5%以上]
があります。この診断手順の目玉はHbA1cが重要視されたことで,以下の3点に要約されます。
(1)HbA1cを積極的に糖尿病の診断に取り入れ,糖尿病型の判定に新たにHbA1c値の基準を設けた。
(2)血糖とHbA1cの同日測定を推奨し,双方が上記基準を満たす糖尿病型であれば,1回の検査で糖尿病と診断可能となった。 (3)HbA1c値(JDS値)に0.4を加えた国際標準値も,論文・著書などでは使用していくこととした。 |
75 g OGTTは日常診療で広く行われている糖尿病診断の検査ですが,血糖値やHbA1c値,臨床症状(合併症の存在,口渇,多飲,多尿,体重減少)などから糖尿病の診断が明らかな場合は必要ありません。
血糖は実施が簡単な検査ですが,検体採取条件が大切です。食事の影響が最も大きな検査項目の一つなので,「早朝空腹時」や「随時」という条件がついています。また,採血管には解糖阻止剤としてフッ化ナトリウムを使用しますが,血漿を分離するまでに時間がかかると解糖し,血糖値が10 mg/dLくらい低下することに注意が必要です。
HbA1cは採血前の食事や検体採取条件の影響を受けにくく,検査前1-2か月間の平均血糖値を反映します。グリコアルブミン(後述)はやや短く,1か月ほどの平均血糖値を反映します。
血糖とHbA1cの検査を行うとき
血糖,HbA1c検査は糖尿病を疑う症状(口渇,多飲,多尿などの高血糖症状など)がある場合の診断や,治療の経過観察を目的として行います。また,健康診断や特定検診など,耐糖能異常のスクリーニング検査としても行われます。ただ糖尿病の診断は,これらの検査のみでなく,家族歴,体重歴,妊娠・出産歴,肥満,血圧,合併症などの情報を総合して行います。
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