看護という現象(井部俊子)
連載
2011.06.27
看護のアジェンダ | |
看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き, 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。 | |
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井部俊子 聖路加看護大学学長 |
(前回よりつづく)
「看護の心」を育む日
5月12日は「看護の日」である。この日は近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなんで制定された。国際看護師協会(本部:ジュネーブ)は,1965年からこの日を「国際看護師の日」と定めている。わが国では1990年8月,「看護の日」の制定を願う会(発案・呼びかけ人=中島みち氏)が旧厚生大臣に要望書を提出し,5月12日を「看護の日」とし,その日を含む日曜日から土曜日までが「看護週間」となった。
「看護の日」とはどういう日なのかが,その制定趣旨に記されている。それによると,「21世紀の高齢社会を支えていくためには,看護の心,ケアの心,助け合いの心を,私たち一人一人が分かち合うことが必要です。こうした心を,老若男女を問わず誰もが育むきっかけとなるよう」制定された。国際看護師協会は,「国際“看護師”の日」としているが,わが国は「看護の心」を育む日としている点が特徴的である。
受け手側が示す「看護の本質」
2011年「看護の日・看護週間」中央行事の一環として,5月14日に「忘れられない看護エピソード」表彰式が日本看護協会JNAホールで開催された。このエピソードには1940通の応募があり,看護職部門と一般部門のそれぞれで最優秀賞,優秀賞,入選作品が選ばれた。800字に凝縮された「忘れられない看護エピソード」は秀逸であった。単に感動を体験するだけではなく,看護のエビデンスの蓄積としても貴重であると,昨年の表彰式への参加以来,私は思い続けている。
とりわけ本稿では,看護の受け手の立場となる一般部門の作品を紹介したい。そこには「看護とは何か」が冷静な描写をもって示されている。
*
脳を患った「父」は,病院に迷惑をかける存在だった。怒鳴る。点滴を引き抜く。転んで物を壊す。そのたびに家族は叱られ,病院に居づらくなった。息子である「私」は,転院した病院の看護師にそうした事情を告げると,「仕方ないですよ。一番つらいのは患者さんなんです」と受け止めてく...
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