医学界新聞

連載

2011.06.13

「本物のホスピタリスト」をめざし米国で研鑽を積む筆者が,
その役割や実際の業務を紹介します。

REAL HOSPITALIST

[Vol.6] 病棟管理の専門教育

石山貴章
(St. Mary's Health Center, Hospital Medicine Department/ホスピタリスト)


前回よりつづく

Effective communication! It is the most essential, least expensive diagnostic tool.
(十分なコミュニケーション! 最も安価,かつ効果的な診断手段だ。)

Think about as many differential diagnoses as you can imagine. Consider all of them. Otherwise, you will miss one.
(でき得る限り,鑑別を考えろ。さもないと,見逃す。)

 私の所属する病院は教育病院,こちらで言うところのTeaching Hospitalである。この市中病院で,多くの若手医師が日々実践的な研修を受けている。私自身,ここで3年間の研修を受けた。一日患者を取るオンコール。半日取るショートコール。ICUローテーションでは,中3日での泊まりの夜間勤務。ヌーンカンファレンスやグランドラウンドでの発表,そしてジャーナルクラブ。きめ細かい鑑別の仕方から,エビデンスに基づく検査,そして治療の提示。密度の濃い3年間。とにかく,しごかれたと言っていい。

 そして冒頭の最初のせりふはわが師匠であるDr. Vaidyanから,二番目のせりふはプログラムディレクターから,当時口癖のように聞かされたものだ。これらの呪文は,私の体に染み渡るまで繰り返された。現在レジデンシーを経験中の若手ドクターたちも,皆この洗礼を受けているはずである。

 Dr. Vaidyanが新しいファカルティメンバーとなって以来,当院では,徐々にホスピタリストによる教育に重きが置かれるようになった。そして現在,彼が作り上げたホスピタリストグループの役割は,レジデント教育において,そのかなりの部分を占めている。レジデントたちは担当ホスピタリストのもと,チームとしてその手足となって働き,プラクティカルな患者管理を,日々学ぶのである。

 それは従来大学病院で行われていたような,各サブスペシャリティからアテンディングを月ごとに割り振り,朝のラウンドだけを一緒に行うような,通り一遍の総合内科教育ではない。Hospital Medicineのスペシャリストによる,より実践的な細かい指導であり,徹底したOJT(On the Job Training)である。これは,私がレジデントのときにもなかったものだ。

 従来型の教育システムに比べ,ホスピタリストがメインの指導者となったシステムに,医学生やレジデントがより高い満足度を示したというデータが,エモリー大学における調査で...

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook