医学界新聞

連載

2011.07.11

「本物のホスピタリスト」をめざし米国で研鑽を積む筆者が,
その役割や実際の業務を紹介します。

REAL HOSPITALIST

[Vol.7] 病棟管理の専門教育2

石山貴章
(St. Mary's Health Center, Hospital Medicine Department/ホスピタリスト)


前回よりつづく

To be honest with you, I don't know exactly what's going on. However, I know that she needs ICU care for now.
(何が起きているのか,正直わからないんだけど。ただ,ICU管理が必要なことは間違いないと思う。)

Tell me more about the patient's condition, please.
(患者の状態について,もっと詳しく教えてください。)

 患者は70代後半の女性だった。発熱でER受診,肺炎として私のもとに入院となった。しかし,胸部X線上はさして異常所見がなく,また尿路感染等の所見もみられなかった。まずは肺炎として治療を開始していたのだが,そのうち便秘を訴え始めた。そうこうしているうちに呼吸困難となり,また嘔吐し始めた。

 その時点で初めて腹部X線上,イレウスの所見を示した。NGチューブを挿入して様子をみたのだが,呼吸苦がひどく,CO2の貯留が認められ始めたため,ICUに送ることにした。

 前回,私のレジデント時代の経験やホスピタリストとのかかわりを軸に,こちらのレジデント教育について触れてみた。実際こちらの医学教育にかかわると,そのダイナミックさにワクワクする部分が多々ある。では具体的にホスピタリストは,レジデントの能力向上のためにどのような取り組みをしているのだろうか。今回はこの疑問に答えてみたい。

 医学教育に限らず,実地教育上重要となるのは「スキルの向上」と「意欲の向上」の両輪であろう。ホスピタリストは,この両面からレジデントの能力向上に取り組むことになる。スキル面では,ホスピタリストの持つスキルを,OJT・Off-JT両方を通してレジデントに獲得させる。意欲面では,レジデントの年数・能力に合わせ,きめ細い指導から徐々にチームのパートナーとして扱うレベルまで,各段階で周到に各人の意欲を喚起する。それぞれを,より具体的にみてみたい。

 まずは,「スキル向上策」である。ここでは入院時の患者振り分けから入院,経過,そして退院という一連の流れのなか,ホスピタリストが常にレジデントと密接にかかわり,徹底したOJTを行っている。より具体的には以下の通りである。

1)患者の振り分け……この段階で,適切な患者の数あるいは重症度を考慮した患者分配を,担当ホスピタリストが行う(インターン中心のチームとシニアレジデント中心のチームとでは,患者分配も異なる)。
2......

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