3DCGを活用して,医療をもっとわかりやすく身近なものに(瀬尾拡史)
インタビュー
2011.04.04
【interview】
瀬尾拡史氏(東京大学医学部附属病院初期研修医1年目)に聞く
3DCGを活用して,医療をもっとわかりやすく身近なものに
ドラマや映画などで楽しめる,迫力満点の3D(三次元)CG映像。瀬尾拡史氏はその技術を活用し,医療を正しくわかりやすく伝える「医療CG」制作に取り組んでいる。日本では例のない,医学の専門知識を持つCGクリエーターとしての活躍が期待される瀬尾氏に話を聞いた。
――どのようなきっかけで,医療CG制作の道を志されたのですか。
瀬尾 中学2年のとき,NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体III」を見たことがきっかけです。遺伝子や細胞など人体の仕組みがCGで解説されていてとてもわかりやすく感じ,ゲームやアニメとは違う"学べる"CGを作りたいと思いました。医学部をめざしたのも,そうしたCG制作には医学の正確な知識が不可欠と考えたからです。
――東大での医学生生活とCG技術の習得は,どうやって両立させたのですか。
瀬尾 大学1年生の前期で教養課程2年分の単位をほとんど取って時間を作り,約1年間,デジタルハリウッドというCGの専門スクールに通いました。
――5年生時には,裁判員裁判第1号事件の証拠資料となる,3DCG画像を制作されました。
瀬尾 大学のチューターだった吉田謙一先生(東大大学院教授・法医学)に,法医学の鑑定結果を裁判員にわかりやすく示すため3DCGを活用しては,と提案させていただいたのが始まりでした。3週間,約150時間かけて画像を作ったのですが,このときは大学の実習やバレーボール部との両立がさすがに大変でした。
病態生理解説映像「心タンポナーデ」(2008年制作)©Hirofumi Seo 模擬裁判のため制作した3DCGアニメーション。心タンポナーデで心拍動が停止するメカニズムを,1分間の映像でわかりやすく説明している。 |
――そうした活動が実り,学業優秀者や,スポーツなどさまざまな分野で活躍した学生に贈られる「東京大学総長賞」と,総長賞受賞者から選抜される「総長大賞」も受賞されました。
瀬尾 学術的な価値や希少性といった視点とは別に,「医学のことを誰にでもわかりやすく,正しく,かつ楽しく伝える」CGが認められたのは,うれしかったです。
――受賞者で構成される「総長会」があるとか。
瀬尾 そうですね。勉強会を開くなどして交流しているのですが,普段接することのない分野の話を聞け,とても楽しいです。医学部にいると,同じ道に進む人しか周りにいない状況も珍しくないので,なるべく他領域の人とも交流し,視野を狭めないようにしたいと考えています。
医療イラストレーターという職業が確立している米国
――医療イラストレーションを学ぶため,短期留学をされましたね。
瀬尾 はい。東大のクリニカル・クラークシップでは,毎年5年生の2割ほどが海外のさまざまな地域で実習を行うことができます。その制度を利用し,5年生の1-3月に,ジョンズ・ホプキンス大のDepartment of Art as Applied to Medicineと,カナダのトロント大のDivision of Biomedical Communicationsという学科に留学しました。前者はMax Brödelというドイツ人画家が1911年にジョンズ・ホプ...
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