医学界新聞

2011.03.28

集中治療を支える「集学性」とは

第38回日本集中治療医学会開催


 第38回日本集中治療医学会が2月24-26日に田中啓治会長(日医大)のもと,パシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。「集学性(Multidisciplinary)を考える」をメインテーマとした今回,集中治療分野では医学の各分野の横断的な集積と専門性の高い知識や経験の結集が治療に要求されることに着目し,理想的な連携の在り方を考えるための企画が並んだ。

 本紙では,神経集中治療ならびに日本における集中治療医(インテンシビスト)の在り方を議論した,2つのシンポジウムのもようを報告する。


神経集中治療のさらなる発展を求めて

田中啓治会長
 脳卒中の急性期で,二次性脳損傷の予防・治療に大きな役割を果たす神経集中治療。PCAS(心停止後症候群)の概念の普及で心肺蘇生とともに脳・神経蘇生の必要性が認識され,今日その重要性はいっそう高まっている。シンポジウム「SCUの現状と新たなる期待――脳卒中急性期治療に果たす集中治療の進歩」(座長=香川大・黒田泰弘氏,日大・木下浩作氏)では,日本でのSCU(Stroke Care Unit)の現状と神経領域における集中治療の在り方を,7人の演者が報告した。

 まずSCUの現状について報告したのは,古川誠(日大),豊田泉(岐阜大病院),岩下具美(信州大病院)の3氏。古川氏の施設では,救命救急センター内にSCUが設置され,脳梗塞血栓溶解療法適応例と3次救急を受け入れていると紹介。氏は,SCU運用の工夫として,電話トリアージで同療法適応症例の効率的な受け入れを行っていること,予後向上のため早期にリハビリを開始していることを挙げた。

 岐阜大では,脳梗塞血栓溶解療法のシステムが不十分だったことからSCUを設置したという。豊田氏は,脳神経外科医を中心に救急医と集中治療医がサポートすることで質の高い医療を提供できていると説明。心不全を背景とする脳梗塞が多いことから,循環器スタッフとの連携を高め,よりよい医療を提供したいと抱負を述べた。

 岩下氏は,救急・集中治療医が管理するSCUについて紹介。その利点として,標準的な医療が個々の医師の能力によらずチームで実施できることから,全身状態の安定化が高まる点を提示した。また課題として,微細な神経所見の認知が難しい点などを挙げ,脳卒中医とのさらなる連携が重要と強調した。

 引き続き,本多満氏(東邦大大森病院)と河北賢哉氏(香川大病院)がくも膜下出血における集中治療について報告した。本多氏は,くも膜下出血急性期の循環障害を検討した結果,脳への循環障害が患者の転帰を悪化させていることがわかったという。二次的脳損傷を最小限に抑えるため,脳血管攣縮発現までの時期に集中治療を行う必要があるとの見解を示した。

 河北氏は,同大での2001-10年のくも膜下出血の治療成績を検討したところ,初期対応を脳神経外科から救命救急センターとし軽症例にも全身麻酔を行うように治...

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