医学界新聞

連載

2011.03.14

在宅医療モノ語り

第12話
語り手:君を守るため生まれてきたんだ 薬箱さん

鶴岡優子
(つるかめ診療所)


前回からつづく

 在宅医療の現場にはいろいろな物語りが交錯している。患者を主人公に,同居家族や親戚,医療・介護スタッフ,近隣住民などが脇役となり,ザイタクは劇場になる。筆者もザイタク劇場の脇役のひとりであるが,往診鞄に特別な関心を持ち全国の医療機関を訪ね歩いている。往診鞄の中を覗き道具を見つめていると,道具(モノ)も何かを語っているようだ。今回の主役は「薬箱」さん。さあ,何と語っているのだろうか?


栃木に生息していた薬箱さん
配置薬として有名な「越中富山の薬売り」は,300年以上の歴史がある。20㎏以上の行李を背負って巡回し,子どもには紙風船などのお土産があったとか。なんとも昭和の匂いがする引出し。
 裏方の仕事ばかりだったので,SMAPの『らいおんハート』にはびっくりしました。イケメン5人組が「君はいつも僕の薬箱さ」なんて,歌い出すんですから。擬物表現で始まって,挙句の果てに自分は勇猛なライオンになってしまい,愛する女性に「君を守るため,そのために生まれてきたんだ」なんて。当時は私までうっとりして頬がぽおっとなりました。平成12年のヒット曲ですから,草食系男子なんて言葉が流行るだいぶ前の話です。

 実際の薬箱はどうなっているのか,ですか? 文字通り薬が入っている箱ですが,昔も今もお宅によっていろいろですよ。その家の人を癒しているかどうかは私にはわかりません。中身の定番としては,市販の風邪薬や頭痛薬,医者からの処方薬,湿布,虫さされなどの塗り薬,体温計,消毒液とばんそうこう。そんなところでしょうか。薬については,医療機関で処方された薬と自分の判断で買える薬の大きく2つに分けることができます。買える薬の中には置き薬というのもありますね。

 お薬の扱われ方は実にさまざまで,薬局からもらってきたまま白いビニールに入れっぱなしの人もいれば,お菓子の入っていた缶や専用の薬箱...

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