医学界新聞

2011.01.31

「予防できる死」をなくす

チャイルド・デス・レビューシンポジウム開催


 公開シンポジウム「ひとりの死から学び、多くの子どもを守るには」(主催=平成22年度厚労科研 我が国におけるチャイルド・デス・レビューに関する研究班/研究代表者=大阪府立母子保健総合医療センター・小林美智子氏)が12月23日,「ひとりの子どもの死から最大限に学ぶ社会をつくる」(司会=小林氏,国立成育医療研究センター病院・奥山眞紀子氏)をテーマに東京都内にて開催された。

 児童虐待など子どもをめぐる問題が顕在化するなか行われた本シンポジウムには,200人近い参加者が集い,子どもの「予防できる死」を防ぐために何をすべきか,切実かつ熱心な討論が展開された。


シンポジウムのもよう
 チャイルド・デス・レビューとは,子どもが死亡した場合に,その原因や死亡に至った状況を詳細に検討すること。近年欧米諸国では,このレビューを基に防止策を見いだし,病気以外の「予防できる死」を減らす取り組みがさかんになっている。

 一方わが国を省みると,乳児死亡率は世界でトップクラスの低さを維持しているものの,1-4歳児の死亡率は他の先進国と比べ非常に高いことが指摘されている。その一因である小児救急医療体制の不備は喫緊の課題として対策が講じられているが,幼児の死因の多くを占める「不慮の事故」自体を防ぐ方策については,いまだ具体的な議論に至っていないのが現状だ。

 シンポジウムでは,まず米本直裕氏(国立精神・神経医療研究センター)が,諸外国におけるチャイルド・デス・レビュー制度の現状について,その目的や歴史的な背景を踏まえ報告した。本制度は当初,児童虐待による死亡を防ぐために導入されたが,現在は育児放棄,乳幼児突然死症候群,事故,自殺などにまでレビュー対象が広がっていると紹介。医療者,警察,行政など多職種から成る組織横断型のチームが調査を担い,病院,警察,学校,児童相談所など関係機関の記録や家族への聞き取りを通して情報収集を行っていると述べた。一方で,調査内容は国ごとあるいは地方自治体ごとに不統一であることから,日本に導入する際...

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